※アニメ 2期で風丸がメンバーを抜けたときの話
彼女の怒鳴る声に頭を鈍器で撲られたような衝撃を受けた。
「なんで帰ってきたのっ」
何で、帰ってきた?何でだっただろう。彼女に叱られるとその理由が上手く出てこなかった。俺は、俺が帰ってきたその理由が、どれほど弱いものであるか知っていた。俺は逃げてきた。逃げ帰ってきたんだ。それはわかってる。だけど彼女にそれは言えなかった。彼女の前では強くありたいと思ったからかもしれない。
「俺…は、そんなに、そんなに強くない。円堂みたいに…」
「守は強いよ!そりゃあ、守は強いよっでも!!」
俺の言葉を遮ってなまえが怒鳴る。守は強い!でもそれは風丸がっ…仲間が傍にいるからだよ!守はひとりで強いわけじゃない!なまえの言葉が心臓を打つ。なまえが言っているのは至極当たり前で、俺だって知っていたはずのことだった。円堂はひとりで強いわけじゃない。仲間がいるから強くなれる、そういうやつだ。俺は知ってた。知ってたはずだった。何でひとりで帰ってきたの!風丸はっ風丸は守と一緒に帰って来なきゃいけなかったのに。目頭を熱くしてそう言ったなまえに俺は唇をきつく噛んだ。わかってる。わかってたさ。俺は円堂を見捨てて、全てを投げ出して逃げてきたんだ。だけどでも。
「円堂、円堂円堂円堂って、なんだよ!!!!」
「っ……か、ぜ…丸…?」
「そんなのっ…そんなの全部わかってたさ!だけど俺はっ俺は…!」
そこまで言ってから言葉を切った。その先を言おうとする自分がひどくずるい人間なような気がしたからだ。なまえは正しい。なまえの言ってることは全て正しい。間違っているのは俺の方。そんな俺にこんなことを言う権利は…、ない。
「風丸っ!?」
なまえの声が俺を呼ぶのも振り払って俺はなまえに背を向けて走り出した。なまえに合わせる顔がなかった。弱い自分にへどがでた。
きっと俺はなまえに理解してもらいたかった。何故俺が帰ってきたのか、俺の弱さを理解して、受け止めてそして背中をもう一度押して欲しかったんだ。優しく諭して欲しかった。だけどきっとそれは甘すぎる話で、なまえの言う言葉だけが確かな現実だった。
俺はただ円堂を裏切ったんだ。
/崩壊まであと