ビクン、と揺れた肩に自然と口角があがるのがわかった。知らなかったけど、どうしよう、わたし変態かもしれない。震えるその姿にそう悟った。可愛い。自然とこぼしでた言葉に風丸はキッと目を吊り上げてわたしを睨み付ける。そんな顔がわたしを逆に欲情させる。


「気持ちいい?」

「…触、るな…」

「勃ってるのに?」

「っ…!」


木の色をベースに整えられた部屋の床に、手首足首をタオルで縛られた風丸が横たわる。今日はこの家にはわたしと風丸しかいない。両親が旅行で留守にしている家に、わたしが風丸を呼んだのだから当然だ。正確に言えば、家が近所であることにかこつけてわたしが、風丸に病気を理由に授業のノートを持ってきてもらっただけなのだけど。まあ、そんなことはどうでもいい。もちろん病気なんて嘘だったし、わたしの目的は初めからこれだった。


「いまから順番に生まれたての姿になるまで、服を脱がせてあげる」


そう言って微笑んで、それまでやんわりと服の上から触れていた、風丸のモノから手を離した。風丸はモノから手を離した瞬間、一瞬ほっとしたような表情をして、それからすぐに、さらに顔を青くさせた。…脱がす?意味がわからないと言うように顔をひきつらせながらわたしにそう聞いた風丸が、小さな子供みたいでたまらなく可愛い。


「ちょ…待てって!ちょ…早まるなよ!!」

「早まってなんかないよ。計画的な反抗だもの」

「だからっ…!な何で計画的な反抗って、反抗って時点でまず何か色々早まってるだろ!!いっ、今ならなかったことにするから、なっ?や、やめようぜ…?」

「やだ」

「何でだよ!?いやお前っお前っ、何でお前俺なんだって!」

「風丸、焦りすぎ」

「いや焦るだろ!何でお前そんな冷静なんだよ!!」

「何言ってるの?わたし、全然冷静なんかじゃないよ」


ほら聞いてみて?そう言ってわたしは胸を風丸に押し付けた。ぎゅむ。胸に埋もれて慌てふためく風丸に静かにしてと言う。トクントクントクン。ほら、わたしの心臓すごく早く動いてるでしょ?


「…ほんと、だ」

「ね?」

「でも俺お前のやってることの意味が…」

「好きな人の身体、触りたいと思うの、そんなに可笑しい?」

「……え」


ほら話はここまで。風丸の心までとは言わないから、身体をもらうね。そう言って、わたしは今にも何か言いたそうな顔をしている風丸の唇を唸った。まずは軽い挨拶。それから目を見開く風丸に笑いかけて深いキスをする。舌を無理矢理捩じ込めば噛まれるかと思ったけれどそんなことは全くなく、わたしの舌が風丸のそれを追いかけまわす。息継ぎのために唇を放す度に銀の糸が伸びて、それが風丸の顎に、そして首に垂れた。その姿がすごく扇状的でいやらしい。


「っは…ぁ…」


何度となく風丸の唇をむさぼった後、唇を放せば息が乱れた。わたしに翻弄されていた風丸は、わたしよりさらにもっと息を乱していて、目元がとろんとしている。


「っ…ぁ…あ……!」


そのまま体制を変えて、風丸を組み敷きそのまま服に手をいれる。下腹からヘソをなぞり胸元まで。そして服を捲りあげる。現れたふたつの胸の飾りに、思わずまた可愛いと声が漏れた。


「み…見る、な……」

「どうして?こんなに可愛いのに」

「…恥ず、かしい……」


涙ぐんだ顔でそう言って顔を背けた風丸に自虐心が煽られる。風丸女の子みたいだね。そう言えば風丸は力無く、言うな、と反論した。気が付けば風丸の抵抗はなくなっていた。快感に身を任せてしまいたいと、思ってしまったのかもしれない。わたしはそのまま風丸の身体を舐めまわす。風丸は女の子みたいだけど女の子じゃない。だから胸は揉めない。だけど舐めるだけでイかせられるんじゃないかと思うくらい、舌を動かす度に風丸は身体を震わせた。


「…ねえ、下も、欲しいんじゃない?」

「…そ、れは…」

「欲しいんでしょ?」

「……言わ、せるなよ…」


風丸の言葉に図らずして目が細められる。なんだ、簡単だった。硬派だと思ってた風丸も所詮男だったのか。性欲には勝てないただの獣。それでも良かった。風丸がわたしの身体を求めてくれるなら、理由なんかどうでも良かったんだ。

わたしはそのまま手を風丸の身体に這わせそのズボンの中に手を入れ、下着をまさぐり今度は直にモノに触れた。先程までよりも肥大したそれ。でっかいね。シニカルに笑ってそう言えば風丸は泣きそうな顔をして顔を背けた。

それからしばらくわたしは風丸が達するまでそのモノを素早く扱く。ズボンを脱がせようとまでは思わなかった。なぜならわたしは自分の下で喘いでいる風丸を見ているだけで事足りたからだ。そしてやがて風丸は女の子のように高い声を発してイク。あっあっぁあああっ。その姿はまるで醜い動物のようだった。しばらくしてやっと息を整え始めた風丸に、わたしは満足の笑みを浮かべて聞いた。


「ねえどうしてあまり抵抗しなかったの?」

「……そ、れは…」

「風丸が抵抗を止めるの、1番早かったよ」

「…は………?」

「あれ、言わなかったかな。わたしが愛した男の子、風丸で16人目だよ」


ちなみに身体は誰とも繋がっていない。わたしはちゃんと、風丸がわたしを好きなことを知っていた。男って、本当にバカだ。だけど本当にバカなのは好きでもない男で取っ替えひっかえ遊ぶ自分であることはわかってる。それでもわたしがそのバカなことを止めないのは、わたしの育った境遇にあるのか、それはわたしにもわからない。ただやめられないだけだった。欲望に喘ぐ人間は、気持ち悪い。わたしを拒まなかったくせに、まるでわたしを諸悪の根源のように見上げる目が、ひどく不愉快だった。

/愛を知らないのです
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