「エス氏生きてるー?」 「いえーい元気元気」 「すげー棒読みで草。明らかにやばいやつ」 一応ノックして親友の部屋に入れば、紅潮した顔が目に入る。普段が白いだけに、どれだけ熱が高いのか分かりやすい。 「はいコレ頼まれてた薬。ポカロは机に置いておくから」 「助かる……」 小瓶に入った魔法薬(見た目は明らかやべーやつ。アズール産)を渡せば、それはすぐに蓋を開けられ、ごくりと親友の体内へと入れられる。 「まっず」 「効果覿面ですぞw」 うぇ、と如何にも不味いですと顰めっ面を浮かべる#名前#氏に思わず笑う。効果のある魔法薬は大抵めちゃくちゃ不味いのだ。仕方ない。 「あーでも本当に助かったわ」 「妖精族って大変だよね」 「それな」 妖精族であるエス氏は人間用の魔法薬が効かず、妖精族用に調合を変えなければならない。しかもその調合というのがなかなかに難しく、素人には出来ない代物である。いやはや作成をアズール氏に頼んでよかった。いや自分でも作れたけど、適材適所というやつだ。 「しばらく寝れば治りそうだな」 「今日は大人しく寝ときなよ」 心なし顔色の落ち着いてきた親友に、しっかりと釘を刺していく。 普段引きこもりのサポートをさせている僕が言うのもあれだけど、割とエス氏は溜め込むタチだ。まぁそれは大方エス氏の出自のせいだとは思う。溜め込んだものが暴発しないよう、たまにはガス抜きを促すのも寮長として、そして#名前#氏の親友として果たすべき役目だ。 「あー……じゃあソシャゲしてるわ」 返答がイグニハイド寮生の鏡過ぎて草。 「まぁ寝てるならそれでもいいか……」 随分と俗世に染まりきった妖精だな、なんて思いつつ約束を取り付ける。いや#名前#氏を俗世に染めたの十中八九僕なんですけど。 これでしばらくはエス氏も大人しく寝てるだろう。部屋を出るため立ち上がる。 「じゃあ僕は部屋に戻るから、何かあったら端末にチャット飛ばしてね。オンラインにして通知くるようにするから」 「ありがとなイデア。おやす」 「おやー」 布団に包まってひらひら手を振る親友に見送られ、すぐ近くの自室へ引っ込む。 タブレットからエス氏もプレイしてるソシャゲを開けば、エス氏のログイン履歴が0分前で普通に笑った。 ばかか、寝ろ。 top next ×
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