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日が出ているのに吐く息は白く、温かさなんて気持ち程度。厚着をしているのに私もレオンの鼻先も赤い。
しかし私としたことが…。手袋を忘れたのは痛恨の極みだった。
「手、貸して」
『?』
彼は待つように手を差し出した。私はとりあえずコートのポケットにしまっていた両手を見せる。
するとレオンは彼も両手で私の手を包み、口許に手繰り寄せると悴んで丸まってしまった指の背に唇を当てた。
「…冷た過ぎるだろ、これ」
痛みを感じるほどに冷えた指先を包む伏せ目で話すレオンの息が熱い。持ち上げられた彼の目が合えばあら不思議、全身が温まる。
「名前は?」
『なに?』
「わかってるくせに」
レオンはトントン、と自分の唇を叩く。
『いいよ』
―――――ちゅっ
だから私は彼の頬に口づけた。
「まったく泣けるぜ…」
素直じゃないね、とレオンは苦笑い。
私にとって、これが最大の照れ隠し。
====あまあまま====
彼は憎い演出が好き。
でもシナリオには従わない。