☆
※甘いウェスカーさんが苦手な方はご注意ください。
途中断念のためあいまいな終わり方になっています。
☆その1☆
必要最低限の物しかなくても、窓さえあればこの部屋は完璧なスイートルームだ。毎度横になっているベッドといい、いちいち凝った装飾がどこかしらある。現に名前が鼻まで浸かっているお湯の張られたバスタブは最高に快適だった。ただ、気を付けておかないと広すぎて油断すると滑り溺れそうになる。これはウェスカーのサイズに合わせて作ったのか、しかし彼が浸かってもまだ少し余裕がありそうだ。部屋自体はコンパクトな作りになっているが、壁も床も大理石、これは素人でもわかった。
リラックスから出た溜め息はブクブクと泡となって弾ける。
まだまだ、気分はいつまでも浸かっていたい。
――――――ガチャン
『…? ぇ、え!?!?』
ドアが開く音がすれば、自然とそちらを向いてしまう。名前のは跳び跳ねて固まった。一糸纏わずのウェスカーが目の前に立っているのだから。
しどろもどろ慌てふためく彼女をよそに、彼はお構いなしに入室しシャワーを浴び始めた。オールバックを手くしで乱してシャワーで崩す姿に名前の思考回路は停止、体を小さくしてバスタブに留まる。さっき入ったんじゃないの?だから今私が入っているのに。脳内で繰り返される言葉は『どうしよう』。
しかし今回の彼女はいつもと違った。
一瞬だが冷静さを取り戻したのだ。何も慌てることはない。彼がシャワーを浴びているうちに然り気無く退室すればいい話。名前はそっと腰を持ち上げる
――――キュッ…
はずだった。ハンドルが捻られてシャワーの音が止まる。冷静になれたのは本当に一瞬だった。名前の思考回路がショートした。視線は持ち上げないようにただ一点を見つめる。
跳ねる水音、波打つ水面が押し寄せればそれは男が入水してきたしたことを示し、まさかの展開に名前はあまりの突然さと衝撃に勢いよく立ち上がった。脚が耐えられずフラついて彼女がバスタブに手をつくと、ウェスカーはその手を掴み引っ張り自分の胸元に引きずり込む。彼はうまく名前を暴れられる前に後ろから抱き抱え、片手で彼女の両手を拘束する。
『先に上がりますっ…!!』
「遠慮することはない」
名前の耳裏から首筋へと密着する声が這う。彼女は目一杯顔を男から背けた。
見てはいけない物を見てしまい、背後より当たってはいけないものが背中から臀部にかけて当たり…。
『私とこうするよりエクセラさんと一緒の方がっ、ずっと楽しいと思いますよっ…!!』
「どうしてそう思う?」
『ど、どうして…?どうして…、っ、だ、だって…ひぅっ!?』
ウェスカーの片手の指々の腹が名前の腹部を這い回る。胸もあって綺麗だから、言うはずの言葉は飛んでいった。勝手に体はビクビク跳ねて、くすぐったさに堪えても上擦って潰れた声が出てきてしまう。
『っ、私はペットなんですよねっ…?そしたらこういうことしないじゃないですか普通っ…!!』
「俺は比喩として伝えたんだ」
『……っ、!』
「まさか獣として飼われることを望んでいたとは…、しかしそうなるとお前が身の清潔さを保つためには俺が洗ってやらねばならんということか」
『っ!?、違いますっ!!撤回します撤回します今の言葉っ…!!』
今、男に対する恐怖心は限りなくゼロに近く、名前にとって羞恥心のみが作用して涙を滲ませたのは初めてのことだった。
こうなったらどうしようもない。大きな深呼吸をして自分を落ち着かせようとする。
頭のなかで脳が沸々今にも爆発しそうだ。
息荒くも名前は自力で気を落ち着かせることには成功したが硬直が解けなくて全身が痛む。
密着しているだけあって大人しくしていると男の鼓動が背中を叩いてくる。首に掛かる彼の息は火照る名前にとって冷たく感じ、バラバラに動く二人の心音だって聞けた。動かない二人の静寂な入浴はまだ続く。名前はウェスカーよりも長く入っていたが少し温めの温度であったため、のぼせることもなく大人しくいた。
10分、20分と時間が経つ。
まだかまだかと待ち続ければ、いつしか消えるはずのない羞恥心や緊張感は慣れによって感覚が麻痺してきていた。ウェスカーが指先で名前の傷んだ毛先を巻いて弄る。彼女は気にせず受け入れる。
ウェスカーが手の拘束を弛めていることにも気づかずに、同じ体勢でいることに疲れた彼女はいつしか彼に身を預けていた。
最早この逞しくソフトな肉の背凭れが心地好いと認めざるを得ない。名前の目付きはとろんと垂れて変わって、居心地の良さから本人の自覚なしに男に擦り寄ってしまった。
「……」
『……』
散々寝てきたので寝落ちこそしないが、ウェスカーは喋らないし特に害なしで名前の意識はボーッとしてくる。この流れなら解放を待たなくて上がってしまっても平気な気がしてきた。
『そろそろ上がってもいいですか…?』
「あぁ…」
―――――――――――――
『あれ……?』
ベッドの上でうつ伏せから名前は体を起こした。
見ていたのは現実?夢?夢じゃない!!悩んだ境界線が吹き飛んだ。どうしてか?素っ裸だから!
名前は全身を自分に掛けられていたシーツを手繰り寄せて、ぐるぐる巻きにして包んだ。服が見当たらない。
足音にハッとした彼女は振り返った。ウェスカーがデスクよりゆっくりとこちらに向かって来る。
『あのっ……私の服は……』
「お前は自分をペットだと言ったな」
『……ぃ、言いましたけど、お互い意味と取り違えていたみたいだから、誤解が続かないようにそのあと撤回してっ、……ぁあなたも比喩だと仰ってましたよ……ね…?』
ウェスカーが近づけば近づくほど早口な名前の声量が小さくなる。
「悪くない考えだ。お前もたまには違った趣向で飼われてみたいだろう?」
『……』
嫌な予感がする。
『す、すみません、服はっ……』
「俺はペットに服を着せる趣味はない」
「首輪を持ってこさせよう」
「お前がどう鳴くか楽しみだ」
名前は思い、後悔した。
とんでもないことになりそうだ。
俯き顔を背ける彼女の頬に男は背後からそっと口付けた。
☆その2☆
必要最低限の物しかなくても、窓さえあればこの部屋は完璧なスイートルームだ。毎度横になっているベッドといい、いちいち凝った装飾がどこかしらある。現に名前が鼻まで浸かっているお湯の張られたバスタブは最高に快適だった。ただ、気を付けておかないと広すぎて油断すると滑り溺れそうになる。これはウェスカーのサイズに合わせて作ったのか、しかし彼が浸かってもまだ少し余裕がありそうだ。部屋自体はコンパクトな作りになっているが、壁も床も大理石、これは素人でもわかった。
リラックスから出た溜め息はブクブクと泡となって弾ける。
まだまだ、気分はいつまでも浸かっていたい。
――――――ガチャン
『…?ぇ、え!?!?』
ドアが開く音がすれば、自然とそちらを向いてしまう。名前のは跳び跳ねて固まった。一糸纏わずのウェスカーが目の前に立っているのだから。
しどろもどろ慌てふためく彼女をよそに、彼はお構いなしに入室しシャワーを浴び始めた。オールバックを手くしで乱してシャワーで崩す姿に名前の思考回路は停止、体を小さくしてバスタブに留まる。さっき入ったんじゃないの?だから今私が入っているのに。脳内で繰り返される言葉は『どうしよう』。
名前はとにかく外へ出ようとドアを引いた。
―――――ガチャ、ガチャガチャ…
『ぁ、あれっ…?、ぇ…』
開くはずのドアが開かないのだ。
『(な、なんで…!?)』
「…喧しい」
『っ!!!!』
上から降ってきた声は明らかに苛立っている。
叱られても男が背を向けているうちに外に出たい名前は、極力音を立てないようにドアを開けようとした。だがしかしどうしても開かない。ガチャガチャ、ガチャガチャ…、小さな音は反響して大きな音に。
――――パタタタッ…
『ひぃっ!?』
少し大きめな粒の滴たちがいくつも肩に落ちてきて、驚いた名前はドアから手を離し、首を竦め、滴を降らす主を見上げた。鬱陶しそうに前髪を掻き上げた手が彼女の離したドアへと伸びる。
―――――ガチャン
ドアは何事もなく開いた。
☆おしまい☆
――――――
その1はどうあがいて考えても別物という絶望。その2は内容が発展しませんでした。
←*→全28ページ
☆表紙☆Top☆前のページ