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先日泊まった宿屋から少し離れた場所に、ひとつの村があった。しかしその村には活気が無く、そこに住む人々に笑顔は無い。どこの村でも耳に入る子供たちの声もない。皆生きることに絶望しているような、ある意味死人のような顔をしている。村に入ったサイ達は、その様子を見て眉を顰めた。

「何・・・?この村の妙な静けさ」

アカネが思った事を口にすると、目の前を数人の村人が列を作って歩いていた。喪服を着た大人達の列の真ん中には、白装束を着た少女が周囲を挟まれるようにして歩いている。まるで、今から葬式でも挙げるかのようだ。

「あれは、まさか・・・」

姫宮はその列から目を離さずに呟いた。サイもその列の意味が分かり、目を細める。

「・・・・生け贄、だな。」

「生け贄・・・って、まだガキじゃねぇか・・・・!」

恐らく次の生け贄なのだろう、白装束をまとっているのは、年端もいかないような子供だった。精々11、12・・・それくらいの年齢だろう。その少女は赤い花を握り締め、村はずれへと続く道に入って行き、見えなくなる。

「この村にはね、そういう風習があるんだよ。」

「?!」

不意に聞こえた声に驚いて振り向くと、直ぐ側にこげ茶色の髪の少年が立っていた。全く気配に気付かなかった為、四人は一瞬動揺を見せる。

「風習って・・・生け贄の事?」

アカネが聞くと、少年は頷いた。

「僕は竜太。この村のはずれにはね、大きな湖があるんだ。そこにはヌシが住んでいて、定期的に生け贄を差し出さないと、村に水害が起きるんだ。あの妖は覇王の配下だから、誰も逆らえなくて・・・さ」

「覇王の残した妖・・・か。とことん、人の幸せを奪う奴だ・・・」

「だから・・・ガキを差し出してるってのか?」

焔伽は眉間にしわを寄せて言った。

「そうだよ。そうしないと、大人たちが大変な目に合うから」

「・・・・親がガキを犠牲にするってか?・・・・胸糞悪ィ・・・」

やがて、先ほど列を作っていた大人達が村に帰ってきた。その中に、先ほどの子供はいない。それに気付いた焔伽はその場から走り出す。

「僕も行くよ!」

「え、ちょ、焔伽!!」

アカネは焔伽と竜太の後ろ姿に向かって叫び、サイ達は目を見合わせて後を追った。村はずれへと続く道に入ると、辺りは竹やぶに囲まれている。少しして、道を塞ぐ村人と焔伽達が目に入った。


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