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「俺はライナー。で、右がラキで左がラグナ」
「セイラです。よろしくお願いします」
干しかけていた洗濯物をカゴに戻して、軽く頭を下げた。数秒後顔をあげると、ラキと言われた女の子と目が合う。
「よろしくね、セイラ。この屋敷にはあまり女性がいなかったから、すごく嬉しいわ」
女の子らしい、優しい喋り方。加えて可愛い笑顔。同性でありながら一瞬見とれてしまった。
姿勢を正して、3人に向き直る。
「私もクシナさんに聞いて楽しみにしてたの、よろしくね」
本当に良かった。魔界に来て、リルム以外とは初めての女の子。年も近そうで、親しくなれそうだ。話したいことや魔界について聞きたいことは沢山あったけど、3人は仕事上がりみたいだし、遠慮しておくことにした。
「ライナー、悪いけど僕先に上がっていいかな。チィを残して来たから…」
早く自室に戻りたそうな素振りでラグナは言った。
「あ、そっかラグナ君言ってたな。じゃあ戻ろっか」
「引き止めちゃってごめんなさい」
疲れているのに…と申し訳なくなって、慌てて言った。
「気にすんなって。話し掛けたの俺だし。仕事、頑張って!」
笑顔のライナーにお礼を言い、少し見送る。3人は広いロビー中央にある、赤いカーペットの敷かれた階段を登っていった。
彼らはとても話しやすいと思うけど、やはり纏う雰囲気は私とは別の世界の存在という気がした。
洗濯物を広げ、残り僅かな服を干していく。
私は何故ここへ来たのだろう。こんな悪魔だらけの危険な世界、自分には不釣り合いな気がしてならない。
まだ屋敷の外には出たことがないけれど、外にはもっと凶暴で、見るも恐ろしい悪魔が沢山いるのだという。
どうしたら元の時代に帰れるのかすら分からないまま、ここで一生過ごすことになったら…。
ううん、そんなこと考えても仕方ない。
私は最後の洗濯物を干して、やっと終わったと深呼吸をした。この屋敷の中はまだまだ行ってない場所が沢山ある。
帰る方法を探すには、まず情報を集めないと。
「明日、図書室に行ってみようかな」
確か大きな図書室あるとレオンが言ってた。図書室なら、この魔界のことや、もしかしたら500年後に帰るヒントになるものが見つかるかもしれない。
なにも知らないままよりはずっといいはず。微かな希望が見えたお陰か、少し気持ちが軽くなった。
私はカゴをしまって部屋に戻ろうと踵を返した、が。
「…あ…キールが濡らした分の服があるんだった…」
力が抜けて思わずガクリと膝を着く。
まだまだ今日の仕事は終わりそうにない。
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