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「キールが…キールだから…?」

濡れた金色が、微かに寂しそうな色を浮かべて震えたような気がした。でもそう思った瞬間には、また鋭さを取り戻している。

「俺はヴァンピール…つまりは人間とヴァンパイアの混血だ」

「え…」

キールが混血…。彼にも、私と同じ人間の血が流れていたなんて。
思いもよらない返答に言葉を無くした。

「ハーフってのは、生きんのが難しいんだよ、純血と違ってな。息してるだけで蔑まれんだぜ、有り難ぇよな」

自嘲的な笑みを浮かべ、キールは声色に怒気を現した。

「出て行きやがったよ、どいつもこいつも。ハーフに仕える気はねぇらしい。それだけじゃなく、俺を殺す為にレジスタンスまで立ち上げやがった…だから」

俺が殺した。

淡々と告げられたにも関わらず、その言葉は私の中に鉛を落とした。やはり私は、聞いてはいけないことを聞いたんだ。ただ聞いているだけ、でもそれがキールを傷付けている…そんな気がして、私は言葉を遮ろうと口を開いた。
しかしそれはキールによって止められる。

「ここまできたら最後まで聞け」

「うん…」

「親父に仕えてた奴らを殺して、殺して…残ったのは、アイツらだけだった」

アイツらが血の護を指しているのは私にも分かった。彼らは、他の誰が抜けてもキールの側に居続けたのだろう。

「俺は親父を覚えてねぇが、絶対的存在だったんだろうな。血ごときでコロコロと居場所変える馬鹿どもを黙らせてたんだからよ」

キールの首に下がるロケットが揺れた。

「人間の血が交ざった魔王なんざ恥だとかほざいてやがったが、俺に言わせりゃあんな連中が部下だったことのが恥だ。力もねぇくせに、俺に逆らうからああなる」

言いながら、私の耳元に顔を近付ける。

「…てめぇも同じだ、気に食わねぇと思ったらいつだって殺せる。覚えとけ」

低く告げられ、背筋がゾクッとするのを感じた。きっと、私を殺すことなんて簡単。その気になればいつでも可能なのだと、改めて危機感を覚えた。取り敢えず置かれているだけで、私に安全の保証はどこにもないのだ。

「もう行け…と言いたいところだが、折角だし血をもらうか」

は…?

「え、ちょ、ちょっと待って!」

「はァ?てめぇ契約を忘れたか」

魔界に来た直後に一度血を吸われたけど、牙を突き刺されるのはかなり痛かった。あれからまだそう経ってないのに、またあの痛みを味わうことになるのか。

しかし血を捧げるのがここに置いてもらう為の契約。覚悟を決めて首を右に少し傾けた。
キールは私の胸元のエメラルドブローチに手を伸す。普段は襟が開かないように留め具の役割をしているそれを外すし、左肩全体が露になるように襟を広げた。
多少の羞恥心はあるものの、そんなことよりもいつ牙が刺さるのだろうと息を潜める。



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