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絢鷹の顔を見て固まること数秒。

「おか……え?!」

サイが思わず声を上げると、絢鷹と吉野は面白そうに笑う。あまりにサイの反応が面白かったのか、腹まで抱えだす始末だ。

「あはははっ!びっくりした?…ふふっ」

必死に笑いを堪えながら、絢鷹はサイを見つめる。

「いや…普通驚くだろ…」

「この吉野太夫は、正真正銘ウチの実母。この揚屋も、ウチの実家みたいなもんや」

花魁の子である絢鷹にとって、この花街はただの花街ではなかった。実家のような感覚なのだろう。
真剣にお座敷遊びに誘われたのだと思っていたサイは、どこかほっとして肩を落とす。

「ごめんなぁ、お座敷遊びはまたの機会に」

「いや、いい、遠慮する」

からかうように言う絢鷹にため息混じりの返事をして、吉野を見つめる。言われてみれば確かに、絢鷹に似ている気もする。どちらかと言えば中性的で綺麗な顔立ちの絢鷹は、母親似なのかもしれない。

「堪忍しておくれやす、サイ殿。あちきの息子は昔から悪戯が過ぎますよって」

困り笑いを浮かべ、吉野は絢鷹に何も知らされていなかったサイに謝る。

「こちらこそ失礼した。絢鷹には世話になっている」

改めてサイが頭を下げると、礼儀の正しい殿方だと吉野は微笑む。

「絢鷹も絢鷹で、何でまた急に会いに来んしたの?」

吉野が絢鷹に顔を向けると、絢鷹は和やかな空気を僅かに冷まし、真剣な表情になる。

「オカン、ウチとサイちょんが共鳴した」

「……!」

絢鷹の言葉に、吉野は驚き目を丸くする。そしてサイと絢鷹を交互に見つめた。

「共鳴は、血の繋がった身内にしか起こりんせんえ?」

「うん。せやから不思議に思うて、ここに来たんや。……オカン、ウチの父親は…誰なん?」

絢鷹の問いに、吉野の表情が固くなる。どう答えようか思案しているようで、僅かに眉を側めていた。

「どういうことだ?」

「ウチは、サイちょんとウチに直接血の繋がりがあるとは思ってへんねん。なにか別の繋がりがあるんちゃうかと思ってる」

絢鷹のその言葉に、吉野はもう隠し通すのは無理と判断したのか、小さく息を着き、真っ直ぐ絢鷹を見つめた。

「絢鷹、お前の父親は、朱雀門の門番…朱雀でありんす」

「…なに…?!」

「……やっぱりか…」

納得したとばかりに頷く絢鷹と、驚き動揺するサイ。
吉野は二人が何かを言う前に、再び口を開いた。



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