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サイと絢鷹の力が共鳴した。
しかし、共鳴は血の繋がった身内にしか起こり得ない現象だという。

討伐を終えた後、サイは絢鷹に連れられ花街に来ていた。もう夕方だからか、店がどんどん開き始めている。長い道の左右に、朱や桃、橙色等鮮やかな色の灯が点された店が並ぶ。この全てが遊郭だった。
紅色の格子の向こうから、女郎が客を見つめては誘っている。
頭上には、建ち並ぶ店に沿って奥まで提灯がいくつも提げられており、夜間では高天原で一番明るい場所になっていた。

中つ国にはないその異様な光景に戸惑いつつ、数歩先を歩く絢鷹について行く。

「絢、ここって…」

どう見ても、色事絡みの場所だ。真剣な顔でついてくるように言われたから来たものの、絢鷹の意図が分からず困惑する。

「花街…高天原一の娯楽場所や。ちょっと会ってほしい人がおんねん」

絢鷹はそういいながら、目当ての店に入っていく。入口で番頭の男にニ、三言何かを言うと、男は頭を下げて絢鷹を奥へ通す。靴を脱ぎながら絢鷹はサイも一緒に来るように言い、サイは草履を脱ぎ、揃えて置く。
廊下で待っていた絢鷹について案内されたのは、女郎と過ごす座敷だった。
畳の上に赤と金の派手な敷物が敷いてあり、部屋を照らす雪洞もうっすら桃色。屏風にも桜が大きく描かれており、なかなか目にくる部屋だった。

「派手やろー?ここはこういう街やから、辛抱してな」

絢鷹は突っ立っているサイを見上げて笑い、迷い無い足取りで部屋の中央に座った。

「花街ってのは、初めてだからな…」

落ち着かない気持ちで、サイも絢鷹の隣に腰を下ろす。それからほんの少しして、座敷の障子が開かれた。

「お晩どす」

両手をきっちり揃え、綺麗にお辞儀をする女性。障子を閉め、彼女は上座に座った。

「吉野と申しんす」

濃い紫の髪を綺麗に結い上げ、簪は数えきれない程挿されている。左目の下に泣き黒子があり、着物は外で見た女郎が着ているものとは比べものにならないくらい派手で豪華だ。
前で結ばれた帯は、重たげに存在を主張している。

「ここの太夫。吉野太夫といえば、この島原一の花魁や」

「太夫…」

サイが呆然と吉野を見つめると、にこりと艶やかに微笑まれた。その仕種ひとつにすら気品を感じられ、思わず心臓が跳ねる。

「サイちょん、紹介するわ。この人は、ウチのオカンやねん」




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