3


「中つ国にも偏見や差別はある。私の友もずっと苦しんでいる」

綺羅はサイと姫宮を思う。
一度根付いた偏見を取り除くのはとても難しい。サイも姫宮も何ら害のない人間だというのに、大して関わりもしないまま危険だと決めつけられている。

「そう…あの子達も大変な星の下に生まれたね。…それでも笑っていられるのは、お前さん達のような仲間がいるからだろうね」

出雲はにっこりと笑みを浮かべ、綺羅達を見つめる。
例えほんの数人でも、一握りの理解者がいるのといないのとでは全く違う。
黄泉ともそうやって、少しずつ近付いていくしかない。

「黄泉に憑かれて、ある意味よかったかもしれない。彼らの心を直に感じることが出来たからね」

知らないままなら、この先もただ黄泉と戦い続けただろうと出雲は言う。

「あんなに悲しいものを抱えた子達を、放ってはおけないね?」

「もちろんだ」

頷き合う綺羅と出雲を見つめ、影熊は呆れたようにため息を吐く。

「綺羅の師っていうからまさかとは思ったけど、アンタも綺羅に負けず劣らずお人よしだね」

「逆だ影熊。私が出雲から"お人よし"を学んだのだ」

言い返す綺羅に出雲は声を出して笑い、綺羅、影熊も肩を揺らす。

「だがこれで、黄泉を知ろうとする者が少なくとも三人になった。大きな進歩じゃないか」

明るく笑う師を見ていると、いつか本当に分かり合える日が来るのではないかと思えてしまう。
不思議な力を持った師だと、綺羅は改めて感じた。




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