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「………サザンカさん…?」

じっと山茶花を見つめる。
今、確かに瞼が動いた。気のせいなどではない。
しばらく動かないままだったが、やがて、再び微かに瞼が震え、それはゆっくりと開かれた。

「!…サザンカさん…!」

華斬を置き、山茶花を覗き込む。心臓は早鐘のようだ。
山茶花が目を開けたのだから。
ぼうっと天井を見た山茶花は、覗き込む焔伽に視線を向ける。桜色の瞳は疲れを滲ませてはいるが、黄泉ではなく間違いなく山茶花自身のものだった。

「…焔伽…?」

掠れた声で呟かれた名を聞いた、焔伽の空色の瞳が揺れる。

「ああ、俺だ…サザンカさん」

山茶花が布団から手を差し出し、焔伽は両手で包むように握る。華奢で小さな手は、ちゃんと握り返してきた。
そんな山茶花の小さな行動が全て、彼女の無事を知らせる。

「情けない…顔、しやがって…」

力無くも、山茶花らしい笑みと言葉が掛けられる。
焔伽は苦笑し、僅かに首を傾けた。

「あんたのせいだっての…」

焔伽から零れた声は、焔伽自身も驚くほど穏やかで、優しいものだった。
山茶花は唇に綺麗な弧を描き、身を起こそうとする。

「!大丈夫か?まだあんま無茶しねぇ方が…」

眉を寄せて制止しようとする焔伽に、山茶花は大丈夫だと頷く。それを聞いた焔伽は、心配気ではあるが山茶花が起きるのを手伝った。
上半身を起こして座った状態に落ち着き、山茶花は深呼吸する。

「私は何日眠っていたんだ?」

身体が非常に動かしにくいと、少し笑う。
焔伽は茶を淹れながら、山茶花が眠っている間のことを話した。
絢鷹や茶々に救われたこと、黨雲や姫宮が怪我の治療をしてくれたこと。あれからもう一週間が経っていること。
山茶花は語られる内容に静かに耳を傾けていた。

「そうか…色んな人に心配を掛けたんだな」

「皆、サザンカさんが早く善くなることを願ってたさ」

言いながら焔伽が差し出した茶を、山茶花はゆっくり口に運ぶ。胃に何かが入るのも一週間振りだ。自分の身体が機能しているかを確かめるように、時間をかけて飲み干した。

「焔伽…」

夕焼けを見つめたまま、山茶花は弟子を呼ぶ。
焔伽が静かにその横顔を見つめると、山茶花は焔伽に顔を向け、目を細め微笑んだ。

「ありがとう」



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