1


屋敷の一室。
山茶花を連れ帰った日から、早くも一週間が経とうとしていた。
その間、黄泉と戦うことは勿論、焔伽は山茶花の看病をし続けていた。
病気や怪我とはまた違う為、看病と言っても側で見守っていることが殆どだ。

サイとアカネが出掛けてから茶々が訪ねてきたが、山茶花が目を覚ます事はなく、焔伽と少し話をして彼女も帰って行った。
高天原の太陽が沈みかけ、夕日が室内を夕焼け色に染める。
畳に座っている焔伽から伸びた影が、眠る山茶花に掛かった。
白い肌は決して血色が悪い訳ではない。呼吸も規則正しく、うなされていることもない。
それでも、伏せられた睫毛が動くことはなかった。
黄泉は追い出し、傷の治療もした。黨雲曰く、怪我はもう殆ど善くなっているようだ。
後は本当に、精神の問題なのだろう。黄泉に掻き回された魂が修復されない事には、山茶花は目覚めない。

きっと大丈夫だとは思っていても、やはり不安が過ぎってしまう。
もう目覚めないのではないか。
焔伽は自嘲気味に苦笑し、ため息をつく。

「らしくねぇ…」

その一言は、落ち込む自分と、静かに眠る山茶花に向けられたようだった。
いつでも笑っているのが焔伽で、いつでも活発なのが山茶花だ。
全くの正反対な現状に、調子が狂う。

焔伽は山茶花の横に寝かせてある刀…華斬に目を遣る。
まさか師から預かった刀で、師を貫く事になるとは思ってもみなかった。
焔伽の持つ刀では、神は斬れない。故に高天原の刀である華斬を使う他なかったのだが、複雑な心境だった。

焔伽がそっと華斬を手に取った瞬間、視界の端で山茶花の瞼が動いたような気がした。



[ 61/171 ]

[*prev] [next#]




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -