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「だから、戦姫(いくさひめ)って…」

アカネの呟きに、千代菊は頷いた。

「戦姫?」

「うん。あたしと愁麗、千代菊は、高天原で"姫"って呼ばれてるの」

高天原という世界に直接影響を与える力を持つ者が、姫と呼ばれるらしい。アカネは生命を、愁麗は理を、千代菊は力を司ると、アカネはサイに説明した。

「千代菊が戦姫って呼ばれてるのは、強いからっていうのが理由じゃなかったんだね…」

兵器として生まれた存在だから、戦場でしか存在理由を示すことが出来ないから戦姫と呼ばれるのだと、アカネは悟る。

「悲観してはいない。軍を纏める役目を天照にもらったからな」

天照は全ての母だ。
例え造られた存在でも、命ある者には分け隔てなく慈愛を与える。
祟り眼を抱える者にも、優しく手を差し延べるのだろう。
千代菊は他の誰の為でもなく、天照の為に使命を真っ当しているのだ。

「金色の瞳は異端の証…」

この先もずっと、サイに付いて回る刻印。
人でありながら、神の力を持つということの異端さ。
高天原では普通に生きられるとはいえ、自らが他者とは違うと言うことを忘れるなと…千代菊はそう警告しようとしたのではないかと、サイは感じた。
人間でありながら神の力を持つサイに、力に飲まれ、驕り高ぶるなという警告だ。

「ここへ来たついでに、ひとつ助言をしておく」

「助言?」

サイが眉間にしわを寄せると、千代菊は頷いた。

「その右眼には朱雀が宿っていると言っても過言ではない。その朱雀の力に、強い影響を受ける者がお前の近くにいる。不用意に眼を晒すのはやめた方が良いだろう」

「朱雀の力に影響を受ける者?誰だ」

サイの問い掛けに、千代菊はそれ以上答えることはなかった。
彼女には勿論それが誰か分かっているようだったが、敢えてなのか何なのか、サイに教えることはなかった。



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