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そう言って苦笑した千代菊は、初めて表情らしい表情をサイ達に見せた。
同じ、とはどういうことなのだろう。彼女も異端者なのだろうか。しかし、高天原では金色の瞳にそのような言い伝えはない。

「高天原では、瞳が金色でも迫害されることはない。しかし…ここでも、金色の瞳を持つ者の生まれが特殊である事に変わりはない」

普通に生まれた神の子は、金色の瞳など持たないと千代菊は言う。それは逆に言えば、千代菊自身が普通ではない、ということだ。

「え…でも、綺羅とかも金色だよ?元は高天原出身だけど、異端ってことは…」

「修羅族だろう、その者は」

教えてもいない情報を、再び千代菊は言い当てる。彼女の瞳には、考えていることの全てが見えているのだろうか。
アカネは困惑しつつ、ぎこちなく頷いた。

「修羅族は高天原の精霊石から生まれる。つまり母はいない。既に異端だろう」

言われてみれば、修羅族のように自然から生まれる生き物は他にいない。

「普通に生まれなかった者が金色の瞳を持つ。これが高天原の言い伝えだ」

迫害されることはない。
しかし、他人と異なることに変わりはない。高天原でも中つ国でも、金色の瞳とは異端。

「お前は何故…?」

千代菊の話通りならば、金色の瞳を持つ千代菊も、何らかの特殊な事情があるのだろうと、サイは問い掛けた。
千代菊は静かに自分の胸に細く白い手を当て、目を細める。

「私は、生き物ではないからな」

「…どういうこと?」

千代菊を知っていたアカネも、今のことは初耳の様子だ。

「私は、造られた生命なのだ。人でも妖でも、神でもない」

この世にたった一人だけの、造られし命。万の知識を持ち、千の孤独に苛まれながら生きる人工生命体だと、千代菊は言った。
話が飛び過ぎて、アカネはついて行けずにただ瞬きを繰り返している。

「千代菊しかいないのか」

「私だけだ。私ほど異端な者は、きっと存在しないだろう」

生き物として機能はしているが、そもそも生き物とすら呼べないと千代菊は言う。食べることや眠ることを必要とせず、生まれた時からあらゆる知識を持ち、人の心を読むことが出来る最強の兵器。

「元々は軍事に使われる為に、私は造られたそうだ。天照に助けられたお陰でこうして軍を束ねてはいるがな」



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