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「彼女が…防衛軍の総隊長…?」

サイ達の前に座っているのは、大人でも子供でもない年頃の少女だった。だが、あどけない容姿とは裏腹に、千代菊の金色の瞳は全てを見透かしているかのような、凛とした透明感を放つ。

「そう驚くな。これでも、幾千もの時を生きている」

ふ、と目を細め、口元に笑みを浮かべる。それはどこか天照に似た雰囲気だ。だが天照とは異なり、どこか影を帯びた微笑み。例えるならば、天照が陽、千代菊が陰だろうか。
千代菊は静かに、淡々と語った。

「火明が連れてきた中つ国の者だな」

「…ああ、サイだ」

千代菊はサイをじっと見つめる。その視線は、右眼に注がれているようだった。眼帯の奥を見透かされているような、ざわざわと落ち着かない心地に、サイは左目を千代菊から逸らす。

「朱雀がいるな」

決して大きくはない声で掛けられた一言で、サイは逸らしていた左目を瞬時に千代菊に戻す。千代菊は相変わらず、サイの右眼を無表情のまま見つめている。

「分かるのか…?」

サイが朱雀を殺したというという話は、高天原でも有名だったと先程燕志から聞いた。しかし、サイは一度も"右眼に朱雀の力を封じた"とは口にしていない。
隣にいるアカネも、驚きに目を丸くしている。ということは、アカネもこの事は口外していないのだろう。

「右眼に朱雀を飼っているのだろう、能力を受け継いだのか」

サイは千代菊を見つめるが、その無感情とも取れる程の静かな眼差しに含まれた意図を読み取る事は出来なかった。
少しの沈黙の後、サイはゆっくりと右眼の眼帯を外す。開いた瞳は、千代菊と同じ金色だ。

「災厄を呼ぶ金色の眼…」

「…知ってるの?!」

千代菊の呟きに、アカネは彼女とサイを見遣る。

「中つ国ではそう呼ばれているのだろう」

「そうだ。実際、中つ国では金色の瞳は災厄を招くだろう」

祟り眼にされた者しか、金色の瞳は持たないのだから。

「では、お前も中つ国にとっては災厄なのか」

「それは違うよ、サイの呪いは解けたもん。もう祟り眼じゃ…」

「いずれにせよ、異端である事に変わりはない」

小さな呟きも、アカネの言葉を遮るには十分だった。異端という言葉は、サイやアカネ…仲間達に纏わり付いてきた言葉だ。

「私も同じだ」



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