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「そうか…そいつぁ良かった。噂にしか聞いたことは無かったが、祟り眼はあらゆる呪いの中で一番苦しいものらしいからな」

呪いの種類がどれくらいあって、どんなものなのかは詳しく知らないが、サイはその言葉に納得した。叶うなら、今祟り眼に苦しむ者を助けてあげたいとも思う。
祟り眼の呪いを解き、生還した者として。
実際は、救う方法がないのだが。

「んじゃあ、何で眼帯してんだ?呪いはねぇんだろ?」

「ああ…」

言われてサイは眼帯を押さえる。

「呪いは消えたが、眼の色までは戻らなくてな。俺の眼は元々両方赤なんだが、呪いによって右眼は金色のままだ」

「高天原では違うけど、中つ国では、金色の眼を持つ者は災いを招くって言われてて。だから眼帯外せないの」

右眼がバレたら、村にいられなくなるとアカネが付け足した。
燕志はふむ…と低く唸り、煙管を置いた。

「どこの世界にも偏見や差別はあるんだな。…まあでも、俺やことりは何も気にしねぇ。高天原の連中もきっとな。だから煩わしかったら取っちまえ!」

眼は見えてるのに勿体ないぜ、と燕志は笑う。ことりも微笑んで頷いた。二人の笑顔には勿論、偏見はない。
サイとアカネは顔を見合わせ、嬉しそうに微笑む。

「外したら?サイ」

アカネはにっこりとサイを見上げる。そうだな、と、サイは右眼を隠す眼帯を外した。閉じていた右眼をゆっくり開くと、金色の瞳が露になる。
ことりは吸い寄せられるように目を開き、僅かに前のめりになりながらサイの右眼を見つめた。

「綺麗な色どすなぁ…ほんま、何も怖いことおまへんのに」

「左右で色が違うなんて、俺は洒落てると思うぜぇ?」

燕志の言葉にことりも同感と何度も頷く。

「それにサイ様、素顔の方が男前でええよ」

「そ…そうか…?」

あまりにも真剣な眼差しで褒められ、サイはぎこちなく視線を泳がせる。

「照れてる照れてるー!」

アカネは茶化しながら、サイの腕に抱き着く。照れから僅かに頬を染め、サイは人前だぞ、とアカネを諭す。
そんな様子に燕志は再び笑った。

「いやー、仲が良いってのは良いねぇ!お前もたまには甘えて来りゃいいのに」

燕志がことりを見遣ると、また軽く睨まれる。

「お仕事中はあきまへん!」

燕志がちぇっ、と口を尖らせた直後、部屋の外から声が掛かった。



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