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「やった、か…?」

目を細めた瞬間、赤い炎の中から黒い闇が溢れだす。渦に対抗するように内側で燃える闇の炎に、絢鷹は目を見開いた。

「まだか…!」

印を強めるより早くに、内側から闇により炎の渦が消し飛ばされる。火の粉が散り、赤い炎は闇に飲まれていった。

「熱ィじゃねぇかァ…!」

軽い火傷を負ったいろはは、絢鷹を睨みニヤリと笑う。
あれを受けて火傷で済む者などそうそういない。地水火風の忍術の中で、火遁は絢鷹が最も得意とする忍術だった。
それをもろに受けたというのに、さほど痛手を受けていない。

「やっぱ、普通の黄泉とは段違いやな…」

「ハッ、一緒にすんなァ」

いろはが絢鷹に向けて右手を翳すと、それに従うように闇が伸び、絢鷹を襲う。
刃のように実体がない為、受け止めることが出来ない。避ける絢鷹を、今度は闇が追い回した。

「もっと逃げ惑いな!」

楽しげに闇を操るいろはから視線を外さず、絢鷹は避けながらもいろはとの距離を縮めていく。
地を蹴り、宙返りをしながら、触手のように伸びる闇を撒いていった。
そして絢鷹は、いろはとの距離が射程圏に入った瞬間クナイを投げる。素早く印を結び、その数を数千に増やした。

「!」

いろはの頭上に円を描くようにクナイが並び、絢鷹の印を合図に一斉にいろはに降り懸かる。
地が抉れ、激しく土煙が上がる。絢鷹を追っていた闇は消え、着地し様子を伺う。
しかし直後、首に冷たいものが突き付けられ、絢鷹は目を見開いた。

「残念だなァ」

背後から掴まれ、人質のように首に黒い刃を当てがわれる。一筋の汗が頬を伝った。
いろはは背後から絢鷹の顎をぐっと持ち上げ、顔を見下ろす。

「へーえ、やっぱお前可愛いなァ」

眉ひとつ動かさず、視線を合わせない絢鷹に笑みを浮かべる。

「恐怖はねぇ、か。益々気に入った…てめぇの負けだァ、諦めな」

吐息が掛かりそうな距離でいろはは嬉しそうに言い、目の前の唇に噛み付こうとした。しかし、首に何かを感じ動きを止める。

「お前の負けや」

背後で冷たい声がした直後、刃が振るわれる。いろはの背後に立っているのは絢鷹だ。
咄嗟に飛びのいたいろはの首は、斬れて出血しているが頭は飛んではいない。

「ぐ、ッ…!」

斬られた首を押さえ、絢鷹を見遣る。

「成る程…変わり身か…!」

今までいろはが捕らえていたのは、絢鷹の忍術により造られた変わり身。先程まで押さえていた絢鷹は、木の葉になって散っていった。

「防衛軍の隊長を、ナメんな」



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