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「さっきの神は可愛かったから、生かして遊ぼうかと思ってたんだが…お前のせいで逃げられちまった」

いろはは一度ぐっと伸びをして脱力した後、親指を舐め、絢鷹を睨む。その瞳はまるで獲物を狙う捕食者のような鈍い光を宿していた。

「代わりにお前を頂くかぁ…いや、ぶっちゃけお前のが俺様好みだ」

「…何の話や」

「お楽しみの時に教えてやるぜぇ、ネコ!」

眉を側めた絢鷹は、僅かな殺気に反応し咄嗟にその場から飛び退く。直後、絢鷹が今まで立っていた場所に炎のように燃える闇が放たれた。

「へぇ、やるなぁ」

「ウチは隊長やで。簡単に倒せると思うなよ」

隊長、と聞いたいろはの目の色が変わる。好奇心とも取れる、子供のような輝き。つい先程の鋭さとは全く異なる色を宿し、絢鷹を見つめる。
新しい玩具を見つけた、そんな表情で。

「お前隊長か…そいつぁイイ…!雑魚ばっかで退屈してたところだァ」

「退屈する暇なんて与えたらん」

絢鷹はニッと笑い、暗器を投げる。飛び退いたいろはを、次々と針やクナイが襲う。
絢鷹は印を結び、術式を口ずさむ。その言葉に反応し、暗器はまるで分身したかのように数を増やし、避けられた後もいろはを追い続けた。

「っと、避けるだけじゃ無理かァ」

跳び回って避けていたいろはは、それでは埒が明かないと気付き、間合いを取って着地する。
両手を地面に翳すと、いろはの影から闇がふわりと舞い上がり、翳された両手に収まった。
影だったそれは鋭利な刃に形を変え、太陽の光を反射して鈍く光る。
襲い来る無数の暗器をいろはは次々と弾いていく。弾かれた暗器は足元に散らばり、追いかけてはこない。視界を覆うような暗器の雨を掻き分け、見えた先の絢鷹に斬りかかった。

袖に忍ばせていた暗器を抜き、いろはの刃を受け止める。順に振られる二つの刃を、狂いなく小刀で受け流していった。左手で刀をやり過ごしながら、絢鷹は右手で印を結び、いろはを睨む。

「!」

咄嗟に離れたいろはに、炎の鳥が襲い掛かる。火遁の術式で造られた鷹のような火の鳥は、激しく炎を吹きながらいろはの回りを飛び回る。
絢鷹が印を結ぶ手に力を込めると、鷹の描いた輪が火柱に変わった。炎の渦の中心に閉じ込めたいろはは出てきていない。
手応えを感じながら、空に向かって伸びる灼熱の柱を睨んだ。



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