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太陽の宮を後にした絢鷹は、任務の前に黨雲の元を訪れた。
黄泉の襲撃が治まり、ようやく黨雲の手も解放されたところだ。
茶を飲んでいた黨雲は、絢鷹の姿を見るなり棚から薬を取り出す。

「これが次の一週間分だ」

「いつもおおきに、黨さん」

赤い錠剤の入った包みを、絢鷹は大事に懐に仕舞う。このやり取りは毎週欠かさず行われているのだ。週初めに絢鷹は必ず、今仕舞った薬と同じ薬を貰いに来る。

「お代はいつも通りで」

「ああ、お大事に」

薬代も、毎週絢鷹の給金から引き落とされるようになっている。薬は決して安いものではないが、軍の隊長である絢鷹なら、払えない額ではない。
黨雲の部屋を後にし、直ぐさま別の部屋へ向かう。二番隊の隊員が住む屋敷があるのだ。忍の修業にも使われる屋敷である為に、そこかしこに仕掛けが施されている。
何も知らない一般人には危険な為、二番隊隊員しか寄り付かない。
瓦屋根の屋敷の門を潜り、壁を何度か規則正しく叩く。すると、何も無かった壁がぐるりと回り、向こう側へと進めるようになった。
このような仕掛けが屋敷中にあり、中には間違うと武器が飛んで来るような仕掛けもある。
絢鷹は勿論慣れている為、何の苦もなく進んでいく。
目的の部屋の前に立ち、中にいるであろう人物に一声掛けた。

「暁、入るで」

「はい」

少し掠れた、力無い声が中から返ってくる。絢鷹は一瞬、苦しげに目を細め、だが直ぐにそれを笑顔で掻き消し、襖を開けた。

質素な部屋には、布団が一式敷かれている。上半身を起こし、入ってきた絢鷹に微笑みを向ける男は暁といい、絢鷹の部下だった。
顔の左半分を隠すように包帯が巻かれ、赤黒い血が滲んでいる。寝間着に身を包んだまるで怪我人姿の部下は、決して怪我などではなかった。

「いつもの薬、持ってきたで。取り敢えず今日の分飲もか」

「毎日すいません…隊長」

申し訳なさそうに眉を下げて苦笑する暁に、絢鷹は微笑む。

「何ゆーてんの、当たり前のことやん」

白湯と一回分の錠剤を用意しながら、明るく笑う。
その笑顔の奥にあるものに、暁は気付いている様子だったが、つられるように微笑みを浮かべた。



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