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「違います…!私が聞きたいのは、そんなことではなくて…」

「知ったところで、幽閉されたお前に出来ることは何もない」

冷たく言い放たれた言葉に、愁麗は黙り込む。何も出来ない自分が悔しい、天照や神々に迷惑をかける自分が情けない、そんな思いが愁麗の胸を締め付けた。
世界の安定を守る理の姫であるはずなのに、世界の乱れを引き起こしている。

膝の上で両手をきつく握る愁麗に、影狼丸は目を細めた。

「お前には、やってもらいたい事がある。それを成し遂げるまでは、例え死にたいと乞われたとしても死なせはしない」

影狼丸の言葉に、愁麗は瞳を震わせる。ただここにいて、黄泉に利用されるしかない。
突き付けられた現実に、唇を噛み締めた。

「争いを、起こすつもりですか……私達、神と」

俯いたまま発せられた言葉に、影狼丸は何もない天井を見上げる。

「…必要ならばな」

神々と黄泉が争う…多くの者が傷付き、多くの者が命を落とすことになる。

「どうして…」

「相容れぬ者同士だ。衝突するのは仕方のない事だろう」

今更話し合いで解決出来るほど、互いの間についた溝は浅くはない。
居住区の神々も、戦いの準備をしているのだろうと、悲しいながら愁麗も理解出来た。

目を伏せて何も言わない愁麗を残し、影狼丸は静かに地下を出ていく。
閉められた重い扉の音が、愁麗の心に大きな鉛を落とした。



「俺様達、自由に動いていいんだよなぁ?」

戻ってきた影狼丸に、いろはが声をかける。

「ある程度はな。だがあまり一度に攻め込むな。…敢えて、時間をかける」

影狼丸には策があるのか、やり過ぎないようにといろはに念を押した。

「りょーかーい!捕まえた神はどう使ってもいいんだよなァ?」

「好きにしろ」

許可を得たいろはは、獲物を睨む猛禽類のように鋭い眼差しで、楽しそうに親指を舐めた。
足を組んで椅子に座るリンカは爪を弄りながら口を開く。

「いよいよね…」

「ああ、やっと動き出せる。…まずは、第一歩だ」

影狼丸に視線を投げられ、いろはは笑みを浮かべて部屋を出て行った。

「一人で行かせていいの?」

「構わない。あいつはああ見えて、色々考えているみたいだからな」

いろはが出ていった扉を見つめ、リンカと影狼丸は静かに微笑んだ。



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