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しばらく戦っていた燕志は、出雲に憑く黄泉が普通の黄泉とは比べものにならない程の力を持っていると気付いていた。
共に連れてきた四番隊隊員も、負傷し、何名かは命を落とし横たわっている。

「あれは桁違いの強さだ。あんな黄泉、出会った事ねぇよ」

抑制者である愁麗を無くしたからかどうかは分からないが、あれ程強い黄泉はそうそういないと、燕志は言った。

「出雲…」

憑かれる、ということがどういう事なのか、綺羅にも影熊にもよく分からない。だが、憑かれている間も出雲自身が苦しんでいるのだとすれば、直ぐにでも助けてやりたい。
拳を握った綺羅に、燕志は付け足すように言った。

「黄泉は肉体と繋がっている。つまり出雲さんに与えた傷は、そのまま黄泉に与えられるってことだ」

「成る程…出雲から黄泉を追い出す為には、多少手荒なやり方も…致し方ないのか」

「そういうこった」

傷付けずに取り戻せれば、それに越したことはない。
だが、この黄泉相手にそれは難しそうだ。

「話は終わったかァ?」

「よく喋る黄泉だな。すぐ相手してやるよ!」

燕志が槍を、綺羅が拳を構えた。影熊は二人から離れ、出雲の右手に回る。

「ようやく手に入れた器だ…簡単に返しゃしねぇぜェ?!」

言葉と同時に向かってきた出雲に向け、燕志は槍を振り稲妻を起こす。出雲目掛けて地を滑るように走る稲妻を左右に避けながら、綺羅は出雲と撃ち合った。
体術で綺羅を迎え撃ちながら、出雲は右手に球状の闇を浮かべる。その闇はぐにゃりと形を歪め、刀のようなものに変わっていく。形の変わったそれを握り、刃を振るった出雲から咄嗟に離れ、綺羅は気を両手足に集中させた。金色の闘気を宿らせ、手を地に着き足を振り上げる。気は出雲へと飛び、出雲はそれを刀で弾いた。
しかし、追撃するように出された稲妻を避けられず、出雲の体が後方へ飛ばされる。

「影熊!やれ!」

「勿論!」

綺羅の一声に、待機していた影熊は楽しそうに顔を綻ばせ、飛ばされてきた出雲に蹴りを入れる。

「ぐ、ッ…!」

出雲…黄泉は顔を歪ませ、なんとか受け身をとって岩場に着地した。蹴られた箇所を押さえ、口からは血が流れる。

「流石に、"魂のある身体"で三人相手はキツいかァ…折角手に入れた器なんだがなぁ」

影熊の蹴りを受けた出雲の身体は恐らく、数ヵ所は骨が折れたはずだ。動きにくいことが腹立たしいのか、黄泉は舌打ちする。



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