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青龍門へ向かう綺羅と影熊。
高天原の道を殆ど知らない綺羅達にも、迷わず辿り着くことが出来た。
門は巨大だ。高天原に立ち並ぶ屋敷の屋根を遥かに越える高さのそれは、遠くからでも容易に発見出来る。朱い朱雀門とは異なり、青龍門は青い門だった。
門に近づく綺羅は、その前に立っている人物に目を細める。
青みがかった長い髪をひとつに束ね、全体的に青い衣を身に纏う男。額には青い刺青が施されている。
恐らく彼が、青龍門を護ると言われる門番だ。
覇王…朱雀の顔にも、朱い刺青があった。門番には全員あるのやもしれぬと、綺羅はそう思った。

「何者だ」

静かに、だが明らかに警戒と敵意を込め、男は綺羅と影熊を睨み構える。

「中つ国から援軍としてこちらに来た。私は綺羅、こちらは影熊だ」

男は綺羅と影熊を順に見、警戒をそのままに構えを解いた。

「俺は青龍。この青龍門の門番だ。中つ国からの援軍であるお前達が、この門に何用だ」

手が足りていないのは朱雀門だ。
援軍ならばそちらへ行けば良いと、青龍は言った。
綺羅は首を振り、青龍門を見上げる。

「師を救出しに行きたい。私の師…出雲はこの門を出たと聞いた」

「出雲様だと…?」

出雲の弟子だという綺羅を青龍は疑わしげにまじまじと見つめる。綺羅は何も言わず、ただじっと青龍を見つめた。

その瞳には曇りがない。ただ真っ直ぐに己を見つめ、大切なものを思う瞳をしている。
そして何より、綺羅からはまるで出雲のような、出雲を思わせる気配を青龍は感じた。

一度目を伏せ、ゆっくり瞼を開く。青龍の目から敵意が消えた。

「俺はこの門を護る身。信用出来ない者を通す訳にはいかない。…だが、お前からは曇りや影を感じぬ…その言葉、信じよう」

「かたじけない」

綺羅は穏やかに笑みを浮かべる。

「お前は信じるが…その者は、信じるに値する者か?」

青龍は影熊を見ながら綺羅に問う。黙っていた影熊はむっと顔をしかめ、腕を組む。

「失礼なこと言わないでくれる?」

「こいつは私が預かっている者だ。少々癖のある男だが、心配いらぬ」

綺羅が嘘をついているとは思えない。青龍はそう感じたのだろう、門を拳で二度叩いた。
それを合図に、巨大な門はひとりでに左右に開き始める。砂埃を上げ、鈍い音を響かせながら、ゆっくりと陰への入口を開いた。



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