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斬り掛かってきた山茶花の刃を、焔伽は受ける。黄泉に憑かれている影響なのか、かつて手合わせした時よりも力が強い。
押されながらも、焔伽は常に風を読んでいた。
刀を押し返し、見えた点を切り裂く。
欠かさず鍛練を続けてきた焔伽の起こす風は、三年前の何倍もの威力だった。
飛び退いた山茶花も同じく風で対抗する。
二人の風は、互角に絡み合っていた。

黙って様子を見守っていた絢鷹は、焔伽の力を目の当たりにし驚く。

「…あの子、何者なん?」

「山茶花様の弟子です」

「成る程なぁ。焔伽…やっけ、風で山茶花ちゃんとやり合えるなんて、中々やるね」

刀をぶつけ合い、風を飛ばし、師弟は息着く間もなく戦い続けている。

「サザンカさん…、どうしちまったんだよ!アンタが黄泉に憑かれるなんてらしくねぇな…!」

刀を受けながら言葉をかけると、山茶花は微笑む。否、山茶花に憑いている黄泉だろうか。怪しげな笑みを浮かべ、確実に焔伽の息の根を止めようと急所ばかりを狙ってくる。
回避出来なければ、命はない。

「折角、会いに来たのに…そりゃねぇだろ?」

山茶花に憑いている黄泉は、普通の黄泉とは桁外れの力を持っているようだ。
感じる闇の気配はどんどん大きくなっていく。焔伽にはそれが、山茶花の意思や心を飲み込もうとしているように感じた。そして飲まれたら、もう戻れない…そんな気がした。

「人の大事なもんに手ぇ出してんじゃねぇよ…!」

刀を持ち替え、焔伽は三回風を斬る。風は渦を巻き、竜巻へと変わり、山茶花を襲った。
本来山茶花なら、斬り返してくるか避けるか出来る筈だ。

「サザンカさんほど、風を操れたり読めたりする訳じゃねぇんだな…」

回避出来なかった山茶花は風を受け、顔をしかめ体勢を立て直す。
直ぐに向かってきた刃を刀二本で止め山茶花を睨む。その目はどこか悲しげだった。

「アンタがいる場所はそっちじゃねぇだろ…違うか!」

刀で押され、山茶花は眉を潜める。
茶々が話してくれたことを思い出し、焔伽は歯を噛み締める。

「俺はここだ…!戻ってこいサザンカ!!」

「、っ?!」

叫ばれた声に、名前に、山茶花の肩がビクッと跳ねる。見開かれた目に、光が戻った。

「お…まえ……」


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