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焔伽が門に近づくと、見慣れない者だからか隊員が数人駆け寄ってくる。武器を突き付け警戒を露にする隊員達に、焔伽は目を細める。
「止まれ」
「そいつぁ出来ねぇ」
止まる様子のない焔伽に、隊員は向けていた刀を首に突き付けた。焔伽はため息をつき、腰に手を当てる。
「天照から許可は得てる」
「何…?」
眉を潜め疑う隊員達に、焔伽が面倒臭そうに頭を掻いた時。
「通せ。その者は中つ国から来た援軍だ。天照からも強く信頼されている。無礼な真似をするな」
凛とした女の声が響く。
焔伽の後ろから歩いてきたその姿を見た隊員は武器を下ろし、一斉に敬礼する。
焔伽が振り返ると、腰に変わった刀を差した緋褪色の髪の女が立っていた。
「あんた軍の上層部の人か?」
「私は茶々。一番隊副隊長だ」
「一番隊?!」
一番隊といえば、焔伽の師、山茶花の統括する部隊だ。
「……まさかお前が、焔伽…か?」
茶々は眉を側め、半信半疑の様子で尋ねる。
「ああ、サザンカさんに聞いたのか?」
肯定すると、茶々は焔伽の持つ華斬を見つめ、その後一瞬焔伽を鋭く睨み、隊員に指揮を出した。
「門を開けろ!隊長の捜索及び救出に向かう!」
「はっ!」
隊員が巨大な門を数人掛かりで開けている間に、茶々は焔伽の隣に並ぶ。
「私も行こう。私も…隊長の身が心配なのでな」
「…そうか、ありがとよ」
「お前に礼を言われる謂れはない」
焔伽と目を合わせず、門の先を見つめながら話す茶々は刺々しい口調だ。
焔伽が肩を竦めると、門は完全に開いた。先には枯れた荒野が続いている。
「私もこの者に同行する。この陣はお前達に任せた!何かあれば自分達で対処しろ、黄泉は一歩も入れるな。いいな!」
隊員が返事をし敬礼した後、茶々は先に荒野へ踏み出す。その一歩後ろを、焔伽は歩いた。
「お前、サザンカさんに似てるな」
「…は…?」
いきなり掛けられた言葉の意味が分からず、茶々は不機嫌に顔をしかめ、肩越しに焔伽を見る。
「言動とか雰囲気とか…ちょっと似てる気がする」
焔伽が言うと、茶々は視線を荒野に戻し、苦々しい表情を浮かべる。
「……隊長は、私の憧れの方だからな」
女の身で隊長を務めるのは、山茶花しかいない。
強く気高く、隊員思いなその姿に憧れを抱くのは、女隊員として当たり前だと茶々は言った。
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