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「黄泉が夜に強くなるというのは、知ってますね」

焔伽はその言葉に、修業中に師が言っていた事を思い出す。黄泉は夜に力を増す為、基本的に夜は黄泉に近付かない方が良いと、師は言っていた。

「俺はサザンカさんに聞いたことがある。黄泉とは戦ったこともあるが…そんなにやばい強さだった覚えは…」

「黄泉が夜に力を増すのは、愁麗が眠りにつくからなのです。眠っている間は、愁麗も能力を使えません。よって夜間のみ、黄泉は力を増すのです」

「…そうか、愁麗が攫われ、能力が使えなくなったから…黄泉を抑えられないから、昼夜関わらず黄泉は常に力が増した状態ってことか」

話を聞いたサイの憶測に、天照は深く頷いた。
愁麗がいなくなった。それが黄泉の狂暴化に繋がり、今回の騒ぎが起こっているのだ。

「ですが…愁麗は一体、誰に?」

姫宮の問いに、月読は一度視線を落とし、その赤い眼をサイ達に向けた。

「愁麗は黄泉の敵将に攫われたようだ。どうなっているのかは…分からぬ」

表情を曇らせた天照を見、最悪の事態も考えられるのだと、サイ達は悟った。

「救出する為に、防衛軍が全軍出動しています」

「…ってことはサザンカさんも?」

山茶花は一番隊隊長だ。
それを知っている焔伽は、天照を見上げる。だが、天照は口を閉ざし、目を伏せている。
同じく月読も、足元を見つめたままだ。
その様子に、焔伽は目を細める。

「山茶花と…そして出雲は現在行方不明です」

「何…?!」

焔伽と綺羅は同時に言い、二人の表情が動揺に包まれる。

「一番隊である山茶花は、防衛軍の斬り込み隊長でもあります。異変が起きて直ぐに、彼女と数人の隊員は黄泉の元へ調査に向かいました。心配した出雲も同行しましたが…以降連絡が取れません」

「…もう一週間前の話だ、最悪の事態も有り得る」

同行した隊員も誰ひとり戻ってはいないという。師の安否が分からないと告げられた焔伽と綺羅は、言葉を無くし立ち尽くしている。ぐっと拳を握る焔伽をサイは横目に見、天照を見上げた。

「誰か、捜索に行ってるのか?」

「二番隊隊長、四番隊隊長がそれぞれに当たっています。まだ見つかってはいないのですが…」

先程も、捜索に出たばかりだと天照は言う。

「高天原は人手が足りません…そなたらの力を貸して頂けませんか」

「勿論だ。高天原の神には多大な恩もある。俺達で良ければ、使ってくれ」



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