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阿須波でアカネを待っていたサイ達は、目の前に光が現れたことに顔を見合わせる。
じっと見つめていると、光は大きくなり、アカネ、姫宮、雫鬼がそこから雪原に現れた。
「うわっ、さむっ!」
突然雪原に出るなど思ってもいなかったアカネ達は、視界一面に広がる雪に肩を震わせる。
「おっそいよ!死ぬかと思ったじゃん!」
寒さに弱い影熊は、何かに憑かれているのではないかという程小刻みに震えている。
だが雫鬼を見、その震えが止まった。
「あれ、雫鬼さん?」
「久しぶりだな、影熊」
「ここにいるってことは…雫鬼さんも来るんだ!」
嬉しそうな顔をする影熊の頭を雫鬼は撫でる。覇王の配下であった頃から、影熊は雫鬼に懐いていた。まだ子供だった影熊の面倒を一番見ていたのは雫鬼なのだ。
「あーでもさむっ!」
喜びにより震えが止まったのも、一瞬のことのようだ。
「待たせてごめんね」
アカネはサイに歩み寄る。サイは頷き、姫宮と雫鬼に微笑んだ。
「力を貸してくれるんだな」
「はい、またご一緒させて下さい」
姫宮はふわりと微笑み、雫鬼は頷いた。
「アカネェ久しぶりだなぁ!」
「焔伽ぃい!!」
会うのが久しぶりな焔伽とアカネはぎゅっと抱きしめ合う。
二人とも笑顔で戯れているその光景はまるで兄妹のようだ。
「やっぱ焔伽みたいなのでも会えなきゃ寂しいよ!」
「みたいなのって何だ、こら!」
「きゃああ!焔伽手冷たっ!」
両手で頬を挟まれたアカネは、先程からずっと雪原にいた焔伽の手の冷たさに笑いながら悲鳴を上げる。
「そんだけ待ってたってことだよ!んっとに……元気そうでよかったぜ」
「えへへ、焔伽もね」
「感動的な再会を果たしてる所悪いが、遊ぶのは高天原へ行ってからでもいいか?」
寒くて死ぬ、と笑うサイと頷く仲間達。焔伽とアカネは顔を見合わせて笑い、アカネは鏡を出した。
「寒すぎてゆっくり話も出来ないもんね!じゃあ、行くよ!」
アカネは鏡に触れ、神の国、高天原への道を開く。やはり普通の光とは異なり、神聖な何かを感じる入口。
サイがまずその中に入り、焔伽、姫宮と続いていく。アカネは最後に入り、道を閉じた。
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