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「失礼しま…」

「ひめぇー!!」

一歩入り、膝を着いて頭を下げようとした夢告を押し退け、アカネは親友の元へ走る。

「…っ、貴様…」

夢告はアカネを睨むが、それももう遅かった。


「アカネ!」

その懐かしい姿に座っていた姫宮も立ち上がり、アカネに駆け寄る。互いに嬉しそうに笑いながら抱きしめ合い、しばらくして離れた。

「お久しぶりです」

「ほんとに!あたしひめに会うのが一番久しぶりだよ…!」

アカネが高天原から中つ国に帰ってきたのは三ヶ月前。他の仲間とは会うこともあったが、人里離れた犬神山にいる姫宮に会うのは本当に三年以上振りだった。

「髪切ったんだぁ」

「はい、アカネは伸ばしたんですね」

互いの変化に微笑み合いながら、女中に用意された座布団に座る。

「夢告、貴方もここへいらっしゃいな」

「…いえ、私はこれで失礼します」

一礼して部屋を出て行った夢告を見送り、姫宮はくすくす笑う。

「もう、本当に…」

「どうしたの?」

「彼、一番にアカネの気配に気付いて迎えに行ったんですよ。他の犬神に見つかると、また警戒されて手荒くされるかもしれませんから」

アカネは目を丸くして、夢告が出て行った扉を見る。

「三年前に一回来ただけのあたしの気配なんて、覚えてたんだ…」

「本当、素直じゃないんです」

姫宮は肩を竦めて微笑む。アカネも微笑みながら、扉を見つめた。

「今度来る時は、夢さんにお土産持って来よっかな!……何が好き?」

「夢告は…食べ物なら肉類が好きですよ」

「やっぱりわんちゃんだね」

「ふふ、そうですね」

二人は笑い合い、姫宮は女中に出された茶を一口飲む。
アカネは、三年前とは印象が違っていた。勿論見た目も大人っぽく変わったが、中身にも変化が起きたようだ。

「高天原はどうでした?」

「あたしの知らない事だらけ。一ヶ月修業した時に、大体把握したつもりだったんだけど…思った以上に広いし、仕事も沢山あったりして」

「やはり大きな国なのですね」

一度神の国に赴いた姫宮にも、到底想像も出来ない複雑な組織が集まっていたと、アカネは話す。

「確かに、私達は師の側にしかいませんでしたものね」

「うん。あ、でも、黨雲さん元気にしてるよ」

「そうですか…良かったです」

かつての師が相変わらず医術で人を助けていることを知り、姫宮は少しほっとしたように肩を下ろす。



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