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それを聞いた焔伽は、顔に驚きを浮かべ、真剣な顔のサイを見つめる。

「…なんかあったのか」

「…ああ、高天原がどうやら、危機的な状況らしい」

「何…?!」

焔伽の表情が、驚きから動揺に変わる。神々の住む高天原は、中つ国より余程安全だ。あの神の国が危機的状況など何事かと、サイの言葉を待つ。

「詳しくは俺もまだ知らない。だがわざわざ使いを寄越して応援を頼むくらいだ…余程のことだろう」

サイは家にやって来た茶々の焦った様子を思い出しながら言った。
焔伽の空色の瞳が、微かに揺れる。高天原には、焔伽にとってかけがえのない人物がいるのだ。

「…ちょっと待ってろ!」

焔伽は家に駆け戻り、和花と何か話しているようだ。
少しして、焔伽は刀と小さな木箱を持って戻ってきた。
二本の刀の一本は、高天原のものだ。師から預かった大切なものであるそれは、欠かさず手入れされていたのか美しいままだ。

「それは?」

サイが平らな四角い木箱を見て首を傾げると、焔伽はそれを懐に仕舞う。

「これはまぁ、あれだ、ちょっとな。…それより、行くんだろ?」

和花には簡単にだが事情を説明したと言う焔伽は、すぐにでも出ることが出来る様子だ。

「今、アカネと手分けして仲間を集めている。次は綺羅を迎えに行きたい」

「分かった」

サイは焔伽を連れ、炎馬を待たせている場所へ戻る。その背に跨がり、焔伽も後ろに乗せた。

「俺まで悪ィな」

焔伽が炎馬を撫でると、炎馬は大丈夫だと言わんばかりに鼻を鳴らした。

「よし、行こう」

サイが合図を送り、炎馬は再び空へ駆け上がる。
小さくなっていく村を見下ろすと、外に出て和花が手を振っていた。焔伽は笑顔で手を振り返し、サイに腕を回した。

「綺羅はどこにいるんだ?旅してんだろ?」

「つい先日、綺羅から文が届いたんだ。阿須波にいるらしい」

徒歩で旅している綺羅は、まだそう遠くへは行ってないはず。
阿須波は、覇王が以前潜伏していた火山のある地方だ。年の大半が雪で覆われた寒い土地。
もう火山は崩れてしまい、跡地が残っているだけだが、サイや仲間達にとって感慨深い場所でもある。
炎馬は阿須波を目指し、真っ直ぐに北へ向かい走り続けた。



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