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炎馬を飛ばし、サイはある村を目指す。
サイの住む村から、そう離れてはいない。炎馬で障害のない空を行けば、村が見えてくるのにそう時間は掛からなかった。
集落よりはもう少し活気のある小さな村。
炎馬で着地したその村には、サイの親友がいる。

何度も会っている為、家の場所は知っていた。
商売をする村人や、風車を持って駆け回る子供とすれ違いながら、一軒の家へ向かう。
玄関の少し手前まで来た時、茶髪の少女と目が合った。手に豆腐を入れた桶を持つ少女は、どうやら買い物帰りだ。

「久しぶりだな、和花」

「サイさん!」

笑顔で駆け寄って来た少女は、名を和花という。親友の妹であり、現在共に暮らしている娘だ。

「お元気そうですね!あ、お兄ちゃんですか?」

「ああ、今あいついるか?」

和花が口を開きかけた瞬間、彼女の家から声が響いてきた。

「おーい和花ぁ!俺の手ぬぐい知らねぇかー?」

「…もう、お兄ちゃんったら…ごめんねサイさん、すぐ呼んできます」

眉を下げ、呆れたと笑いながら、和花は家に戻っていく。中で何やらやり取りが聞こえた後、玄関を飛び出して来たのは騒がしい親友だ。

「サイ!来てたのか!」

「ああ、今な。手ぬぐいは見つかったのか?焔伽」

「え?あぁ、布団の下敷きにしてた」

からかうように言うサイに、焔伽は頭を掻きながら、みっともないやり取りを聞かれたと笑った。

「今日泊まってくか?和花のやつ腕に縒りを掛けて飯作るっつってたぜ」

「!そうか…でもすまない、今日は急用なんだ」

サイは申し訳ないと困り笑いを浮かべる。焔伽は首を傾げ、サイを見下ろす。

「そりゃ残念だな…で、急用?」

サイの顔が真剣な表情に変わる。焔伽はそれを見て目を丸くした後、ぐっとサイに顔を近づける。

「ま、まさか…」

「ああ、俺達」

「アカネが身篭ったとかそんな話か?!」

「アホ、違う」

肘で軽く腹を突くと、焔伽は離れ、なんだ…と腰に手を当てた。サイはため息をつき、続ける。

「また、俺達が集まらないといけない事態が起きたみたいだ」



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