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高天原からの使い、茶々が帰ったあと、サイとアカネはそれぞれに身仕度を整えていた。

「高天原で何があったんだろう」

裾の短い、動きやすい格好に着替えを済ませ、アカネは鏡を見ながら長い髪をひとつに纏める。

「さあな…だが、俺達に応援を求めるくらいだ。余程のことだろうな」

サイは座って月夜叉を手入れしながら言う。三年前と何ら変わらない輝きを放つ刀身。
最近は妖でも出ない限り、実戦で使うことがなかった。柄を握り、角度を変えながら月夜叉の状態を確認する。
月読から譲り受けた刀は、久しぶりに振るわれることを感じているかのように光を反射した。
静かに鞘に戻し、腰に差す。
準備が出来た様子のアカネに頷き、家の外に出た。

「しばらくこの家ともお別れだねぇ」

アカネは空になった家を見上げる。

「やることを済ませて、帰ってこよう」

サイが微笑むと、アカネは大きく頷いた。
サイは空を見上げ、指笛を吹く。高く綺麗なその音は、辺りに響き渡る。
寸の間空を見つめていると、空を走る馬が視界に入る。真っ白な身体に、蒼い炎の鬣と尾。三年前の旅でも世話になった炎馬だ。
徐々に高度を下げ、サイとアカネの目の前に降り、鳴き声をあげて止まる。
顔を撫でるサイに甘えるように擦り寄る姿に、アカネは笑みを漏らす。

「ほんとその子、サイが好きだよねー」

三年前助けて以来、炎馬はサイにべったりだ。同じ蒼い炎を操れるというのも、懐かれる要因だろう。

「炎の質も近いからな…安心するんだろう」

サイは炎馬に跨がり、アカネを見下ろす。

「そっちは任せたぞ」

「分かった、ひめにはあたしから説明する。だから焔伽と綺羅をお願いね!」

アカネは手鏡を握りながら言った。高天原から持ってきたその鏡なら、神が触れることで行きたい場所へ瞬間移動することが出来る。
力は封じているが、そもそもが神であるアカネが触れれば、どこへでも行けるのだ。
二手に分かれ、アカネは姫宮を、サイは焔伽と綺羅に会いに行くことにした。

「犬神山に危険は少ないと思うが…気をつけろよ」

「うん、サイもね」

「ああ、後で合流しよう」

互いに頷き合い、サイは足で炎馬に合図を送る。風よりも速く空へ駆け出した炎馬の姿は、あっという間に見えなくなった。
アカネは見送った後、鏡を見つめ、そっと触れた。



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