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焔伽は呆れたようにため息を吐き、サイの頬を抓る。
「巻き込みたくない巻き込みたくないっつってるけどよ、それはお前が決めることじゃねぇだろ。巻き込まれるも何も、決めるのは俺達だ。一度決意したら、その先の危険も全て覚悟するし責任も持つさ」
焔伽の手が離れ、サイは抓られた頬を摩る。
「けど、危険な目に合うことが増える。これは確実だ。危ない目に合わせたくないと思うのは普通のことだろ。俺個人の都合でなら尚更だ」
「まだ分かんねぇの?巻き込まれる事が、幸せな時もあるんだよ。危険に巻き込まれるのが嫌だって、だれが言った?お前が勝手に決めつけてただけだろうが。お前一人に危険な道行かせるくらいなら、俺は自分から巻き込まれてでもついていくさ。もっと仲間を頼れよ」
真剣な瞳に、サイは押し黙る。
なんて奴だ、反論出来ない。
「危険なことなんざ、皆もう慣れてる。今更んな堅苦しいこと言ってんな。お前について行かない道を選んだら、それこそ悔やみきれねぇ」
危険を承知していても、サイと共に在る道を選ぶ。
焔伽の言葉に、アカネも強く頷いていた。
焔伽や仲間の思いに胸が締め付けられるような感覚。優しい苦しさだった。
「お前どこまで俺と来る気なんだ」
「どこまでもですとも!」
冗談っぽく言い合い、また笑う。
こんな時間は、今までも沢山あった。だけど大切にしていなかった。ずっとこのままだと信じて疑わなかったからだ。
だが今は、小さなことで笑い合えるこの時間が如何に大切かがよく分かる。
人間いつ何が起こるかわからない。起こった後に悔いても、もう遅いのだ。
「分かった、次に皆集まった時に全部話す。ちゃんと、全部話すよ。…助けてくれて、ありがとう」
隠すのは、一人で抱えるのはやめよう。
仲間を頼ろう、甘えてみよう。
そんな思いがサイの中で芽生える。
独断ではなく、皆納得した道を歩けるように。
影狼丸のことと黄泉に対する考えを、まずは仲間に聞いてもらおうとサイは自分に約束した。
焔伽もそれを聞いて納得したように、嬉しそうにサイの頭をぐしゃぐしゃ撫でた。
その後やってきた黨雲は、焔伽の無事を確認してほっとひと息ついた。
体に異常はないか、隅々まで診てもらい、健康そのものと判断し安心したように仕事に戻って行った。
サイとアカネは、戻ってきた山茶花と入れ代わる形で席を外した。
二人への気遣い、だ。
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