成る程、そういうことか。
どうやら自分は、言葉には出さずとも態度には出てしまうらしい。
サイは自分の行動を思い返し、苦笑する。

確かに物思いに耽っていることは多かった。
最近は特に、高天原や黄泉のこと以外に影狼丸のことまで色々あったものだから。
人を遠ざけていたつもりはないが、あまり人と会話する気になれずにいたのは事実だ。
正確には、人と話す余裕がなかった。

「俺のことで皆集まってくれたのか」

心底不安気な表情をしていたり、どうでも良さそうにしていたり。
態度は様々だったが、全員の雰囲気が「心配」を纏っていた。
態度が少し違うだけで、顔色が僅かに悪いだけで、気遣い、心配してくれる仲間がこんなにもいる。
その温かい思いで、胸がじんわりと熱くなった。
いい仲間に恵まれている。そう心から思う。

しかし。
だからこそ、話したくないこともある。
大切だからこそ、巻き込みたくはなかった。サイが今悩んでいることは、その巻き込みたくないことに分類される。

「心配掛けてすまない。でも大丈夫だ。考え事はしてるが、大したことじゃない」

「嘘だよね」

半ば被るように、アカネが口を開く。
真っ直ぐな目で、サイを見つめていた。

「嘘、だよね?」

大したことない、なんて嘘。
アカネには、サイのことは分かっている。
口で平静を装う事が癖であることも、分かっいる。

「ごめんね、サイ。あたし皆に話したんだ。影狼丸のこと」

サイとアカネが陰に赴き、初めて影狼丸と対峙した、あの日の事。
影狼丸がサイを一方的に知っていたこと、サイと影狼丸が瓜二つであること。
サイを、普通の人間ではないと言ったこと。覇王も同じことを言っていたということ。

アカネとサイしか知らなかった情報だが、皆に聞かせたとアカネが言った。

「知っておくべきだと思ったから。皆、サイのこと心配してたから」

勝手に話したことを謝るアカネに、サイは首を振った。

「別に問題ない。話しはしなかったが、隠さなきゃいけない程のことじゃない」

それを知られたからといって、何がどう変わるものでもなかった。

「じゃあ…だったら…、サイは隠さなきゃいけない程の何を、隠してるの」

俯き気味のまま、アカネは絞り出すように言った。

「アカネ、」

「あたし分かるよ。まだ隠してることがあるって。黙って、また一人で苦しもうとしてるって!」

バッと顔を上げたアカネの瞳が僅かに震える。
サイはその目を見て押し黙った。




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