サイが影狼丸に真実を聞かされた日から、数日。
中つ国からの援軍としてサイ達が寝泊まりしている屋敷の一室に、親しい面々が集まっていた。
アカネや焔伽、姫宮、綺羅、そして雫鬼、影熊…全員が揃うのは、ここに着いた日以来ではないだろうか。
ほどほどに広い一室に、それぞれが正座したり胡座をかいたり、寝転がったりしている。
一番最後に部屋に入ったサイは、珍しく全員が揃っていることに少し驚いた様子だった。

各々が自分のやれることを懸命にこなす毎日で、暇が重なることは滅多になかった。
食事すらバラバラだった為、見知った仲間とはいえこれだけの人数が一室に集まっていることに違和感すら覚えてしまう。

「誰が声をかけたんだ?」

「俺だよ」

サイが問うと、部屋の入口の障子付近にいた焔伽が座ったままサイを見上げる。

「とは言っても、こうして集まりたいと思ってたのは俺だけじゃねぇさ」

その言葉に続くように、何人かが頷いた。
入口に立ったままのサイは、状況があまり理解出来ずに首を傾げる。

「本人自覚ないワケ?重症だね」

部屋の隅で寝転がっていた影熊は呆れたとばかりに右手を振る。

「とにかく、座ってサイ」

アカネに促され、サイは廊下から畳に一歩入ったところに腰を下ろした。

「で、なんだ、さっきから」

一同が自分に対して何か言いたげなのは、サイにも分かった。
わざわざ全員に声を掛けてまで、時間を作ってまで話したいことがあるのだろう。
促すように一人ずつ顔を見ると、焔伽が座ったまま僅かにサイに近付いた。

「なぁ、サイお前、何を隠してる?」

焔伽の言葉はサイの耳に確かに届いたが、右から左に抜けていくように、引っ掛かりなく通過した。

「隠すって何を?」

思い当たる節がない。
焔伽が突拍子のないことを言ったかのように、目を丸くして見つめ返している。
これには焔伽も困り笑いを浮かべた。

「ほんっとに自覚ねぇのな。お前、最近何か悩んでんだろ。ん?」

子供に言い聞かせるように、何気ない世間話を振るかのように気さくに、焔伽は言った。
サイはそう言われてやっと意味を理解したのか、満更でもない様子で目線を落とした。

「ここのところ、少し様子が変だった。お主は無自覚かもしれぬが、人を遠ざけ、ずっと思いに耽っていた」

「気になっていたんです。最初は私の気のせいかとも思ったんですが、皆さんも薄々と感じてらっしゃった様なので」

綺羅に続いて、姫宮が言った。




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