「そんなんが罪なワケ?」

「神にとってはな。黄泉とは心を通わせたアカンねん。言葉を交わすってのは、そういうことや」

神はとことん黄泉を拒絶している。いろははそう思った。

「お前はなんで、俺様の言葉を聞こうと思った?」

絢鷹も神なら、黄泉を疎んでいたはず。何故会話をする気になったのか、いろはは気になった。

「…終わらんから」

「オワラン?」

「そう。黄泉と神の争いが、終わらん気がしたから…このままじゃ永遠に何も変わらんって、気付いたからや」

それを聞いたいろはは沈黙する。
やはり絢鷹は、黄泉と和解しようとしているようだと悟った。

「黄泉の要求を聞いてみるだけ聞いてからでも、遅くない…そう思ってん。血を流さんで済む道があるんやったら、掟も理も関係なく受け入れるべきやと思うのに…」

神々はそうではないようだ。
少なくとも軍は、その道を選ばない。
そう、軍は。
絢鷹はそこでハッとする。
まだ天照には話していない。彼女に報告する前に軍に行った。天照なら、天照ならどうするのだろう。
命を重んじる彼女が、無下にする話ではないだろう。

「天照なら…、天照に会わな…!」

急に拘束を解こうともがきだす絢鷹を、いろはは制する。

「まぁ落ち着けぇ。急いては…あー、何だっけ?」

「急いては事をしそんじる?」

「あ、それそれぇ。どうせ黄泉の手伝いがなきゃここからは出られねぇし、そんな体じゃまた神にやられんぞ」

自分の隊士達を置いてきている絢鷹は、一刻もはやく陽に戻りたい様子だったが、いろはの言葉を素直に聴き入れておとなしくなる。

「そう…やな、落ち着いて考えな…」

絢鷹が呟いた直後、ガタン、と音を立てて地下の入口の扉が開く。扉を開けたのは愁麗だった。

「いろは…ここにいたんですか。呼び声は聞こえましたが、どこにいるのかと…、!」

愁麗は牢に拘束された絢鷹を見て目を見開く。絢鷹もそれは同じだった。

「絢鷹!」

「姫様!」

二人同時に声を上げ、愁麗は絢鷹に駆け寄り、前に座る。

「絢鷹…絢鷹、本当に貴方なんですね…?!」

まじまじと見つめる愁麗に、絢鷹は驚きつつも安堵した。攫われてから、愁麗の安否は一切分からなかった。
無事だった上、思っていたより元気そうな姿に、ほっと胸を撫で下ろす。




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