「何の意味があるんかなぁ…?…誰が、幸せになれるんかなぁ…?」

千代菊も右京も、今追ってきている三番隊隊士も、望んでこうしているのではないことは絢鷹にも分かっている。
高天原を守りたいが為の行動だ。絢鷹とて、国は守りたい。なのにこういう結果を招いている。

「誰が悪いんかなぁ…?」

言葉にする度に、乾いた地面に染みが出来た。
いろはには、絢鷹が何のことを言っているのか分からない。だがそれを問おうとはしなかった。

やがて絢鷹の背後で複数の足音が止まる。
追っ手が来たのだと、それだけで分かった。絢鷹と向かい合ういろはは、目の前に現れた神々に一瞬目を丸くする。

「黄泉を発見。先程と同じ個体であると確認」

「黄泉は駆除。二番隊隊長は瀕死まで追い込みます」

隊士達は術で右京に連絡を取っているようだ。
絢鷹といろは二人を囲み、矢を向ける。

「おいおい豪勢だなァ!お前ら全員俺様の相手してくれんの?」

いろはは余裕気にぐるりと見渡す。
放たれた矢をひらりとかわし、着地する。だが矢は、いろはだけを狙ったものではなかった。先程同様絢鷹も標的に含まれている。動きが鈍っている絢鷹に、またいくつかの矢が刺さる。
痛覚も麻痺してきているからか、あまり苦しくはない。だが出血しているのは確かだ。
絢鷹は歯を食いしばり、クナイを構える。
そんな様子を見たいろはは、呆然と隊士達を見る。

「は…?お前ら何やってんだ?こいつはお前らの仲間じゃねーの」

絢鷹にまで攻撃するその行動が理解出来ない様子だ。

「同胞なんじゃねぇの」

いろはの言葉は届いていないかのように、答えは返ってこない。
絢鷹は次々と放たれる矢をクナイで弾き、だが術までは避け切れずにまた膝を着く。
その光景全て、いろはにはとてもゆっくりと流れて見えた。まるで時間がその歩みを遅れさせたかのように。
……死ぬ。
このままでは絢鷹は死ぬかもしれないと、ゆっくり理解する。

「、ア゛…ッ!?」

不意に頭痛に襲われ、いろはは顔をしかめ片手で頭を押さえた。
目も開けていられない苦痛に、固く目を閉じ歯を食いしばる。
そして痛みの中、脳裏に見知らぬ光景が映し出された。




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