いろはと話した後、絢鷹は本部へと向かった。
あのまましばらく話し合っていたが、結局最後まで話が噛み合うことはなかった。
黄泉と神の間にある溝は深い。
それを埋めることは容易ではなく、絢鷹もいろはも何処か一線置いた様子だった。

絢鷹はいろはから黄泉の情報を得ていた。黄泉がどれだけの秘密を握っていて、いろはが先程どの程度明らかにしたのかは分からない。だが、確実に神の利にはなるはず。

まずは千代菊、その後天照に報告をしようと、本部へ入る。
大理石の廊下を歩き、千代菊がいる可能性の最も高い会議室の扉を押し開けた。
会議の時は机と椅子が並べられるが、普段は片付けられている。広間のような状態だ。
広間には千代菊以外に、右京の姿もあった。
絢鷹は進み、上階に作られた千代菊の椅子を見上げる。

「総隊長、ただいま戻りました」

「絢鷹か」

透明感のある、鈴のような声。
千代菊は静かに視線を絢鷹へ向ける。だがその目はどこか刺々しく感じられた。
彼女は常に無表情で淡々としているが、明らかな怒りがちらついている。

「…総隊長?」

「…絢鷹、お前、黄泉と通じているというのは本当か?」

絢鷹に語りかけてきたのは、同室にいた右京だった。右京もまた、絢鷹を疑うような眼差しで見つめている。

「黄泉と通じる?どういう意味や」

黄泉を倒すことはあれど、通じたことはない。絢鷹が眉を側めると、右京はため息を吐き腕を組んだ。

「先程、部下から報告があった。黄泉と話をしていたそうだな」

「……!」

「その反応だと本当のようだな…」

右京はひとつ、眉間のしわを増やす。千代菊は何も言わない。
絢鷹は分からないとばかりに肩を竦める。

「ちょお待って、色々聞きたいけど、何でそれをうっちゃんが知ってんの」

「俺は各隊に密偵を忍ばせている。絢鷹、お前の隊にも俺の部下…三番隊隊士がいる。三番隊は軍の参謀にあたる。各隊の状態を常に把握する為に、昔から密偵を使っていた」

絢鷹は驚き目を見開く。
軍に所属してもう随分経つが、今のことは全く知らなかった。

「無論お前以外の隊長も、副隊長もこの事は知らん。先程、お前が黄泉と話をしていたと報告を受けた。…何故だ、掟を忘れたのか?黄泉との対話は裏切りに等しいとされているだろう!」





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