3


ある満月の夜。
雪平と絢鷹、そして数名の忍で任務に当たっていた。近頃数名の神を殺したという黄泉の討伐だ。
敵の詳細が分からないまま、黄泉と対峙し、忍術で対抗した。
影の姿をしていたが、その黄泉は禍禍しい邪気を放っている。
忍達の攻撃も弾いてくるような、珍しく強い黄泉だった。

その黄泉の目が忍の一人に向けられた瞬間、見られた忍は何か大きな衝撃を受けたようにビクリ体を揺らし、口から血を吐きその場に倒れ込んだ。倒れた忍は、腹が不自然にへこみ、一瞬にして事切れていた。

「なに…?!」

雪平の隣に降り、絢鷹は倒れた仲間と黄泉を交互に睨む。

「厄介な相手だ。みな、退避しろ!私が足止めする!」

黄泉から目を離さないまま、雪平は叫んだ。
絢鷹は弾かれたように雪平を見上げ、眉を側める。

「隊長を置いてなんて行けません!ウチも残ります」

そう話す間にも、また一人の忍が吐血し倒れる。雪平はちらりと絢鷹を見、分かったと頷いた。

「他の者は引け!命令だ!」

雪平の命令に従い、残った二人の忍は姿を消した。

「挟むぞ、絢鷹」

「はい」

雪平の号令で、絢鷹は黄泉の背後に回る。雪平が黄泉を引き付け、忍術で対抗している。
雪平が注意を引いている間に、絢鷹は背後から忍術で追い撃ちをかけた。
攻撃を受け、苦しげに黄泉が絢鷹に視線を移し、赤い目を細める。

「絢鷹!!」

雪平はハッと目を見開き、黄泉と絢鷹の間に滑り込み、脇差しで黄泉を切り裂いた。
斬られた黄泉はそのまま溶けるように消滅する。

「隊長…助かりました…」

安堵の吐息混じりに言う絢鷹に、雪平は目を細め微笑んだ。
その直後、雪平の体がビクリと跳ね、前のめりになる。口から大量の血が吹き出し、その場に膝を着いた。雪平の吐いた血が、目の前にいた絢鷹の顔に掛かる。

「隊長!!」

倒れかける雪平を抱き留め、絢鷹も膝を着く。凭れかかる雪平は動かない。

「隊長…!隊長!しっかりして下さ…、」

言いながら、雪平の体に触れた絢鷹は目を見開いた。
慌てて仰向けに寝かせ体を見ると、殺された他の忍同様腹部が不自然にへこんでいる。まるで…

「臓物を奪う、能力があったようだ…」

口があれば、奪った臓物を喰らっていたのだろうと、雪平は途切れ途切れに言う。

「お前は無事…だな?」

「ウチはなんともありません…!でも、隊長…!」

「そうか…なら、良かった…」

再び血を吐く雪平を抱えようとする絢鷹を、雪平が制す。

「いい。私は…ここまでのようだ…」

「そんな…そんなこと…!急いで戻れば、きっと助かります!」

叫ぶように言いながら、絢鷹は分かっていた。雪平はもう駄目なのだと。そんなことは状態を見ればすぐに分かる。だが、信じたくなかった。





[ 112/171 ]

[*prev] [next#]




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -