3


居住区に戻ったサイ達は、怪我人を姫宮や黨雲に任せ、屋敷に入った。
普段は誰かしら昼寝をしている縁側は、今日は誰もいない。二人はどちらともなく座り、庭を見つめる。
何から整理すれば良いだろうか。

「影狼丸は、サイを知ってるみたいだったね」

独り言のようにぽつりと漏らした言葉に、サイは頷く。

「俺の記憶には影狼丸はない。会ったことはないと思う…だが…」

影狼丸と刀を交える度に感じたあの違和感。それは決して、嫌な感覚ではなかった。どこか懐かしい、優しい感じがしたのだ。敵からそんなものを感じとったことは今まで一度もない。

「どこかで会っている、のか…?」

顎に右手を添え考えるサイの横顔を見上げ、アカネは目を細める。
やはり、影狼丸とサイは似ているように思えた。

「サイと影狼丸、すごく似てたの…気付いた?」

「なに?」

疑問で返してきたということは、サイに自覚はなかったようだ。
アカネはサイを真っ直ぐ見つめたまま、影狼丸と重ね合わせる。

「すごく似てたの、二人の顔が。似てるっていうか、まるで同一人物みたいに…」

髪の色や髪型が違う為、よくよく探らなければわからないが、アカネは間違っていない自信があると言った。
ずっと見てきたサイの顔を見間違うはずがない。身長や体格までそっくりそのままだった。

「俺と影狼丸は…なんらかの関係があると考えるべきなのか…?」

向こうが知っているということは、やはり何か繋がりがあるはずだ。

「影狼丸、なんか…悲しそうだった。それに、サイと戦いたくないって思ってたみたいだし」

「確かに、敵意こそ感じたが殺意は感じられなかった。あそこで俺が負けていても、殺されてはいなかっただろうと思う」

無理矢理言い聞かせ、刀を振るっているようだった。邪魔だったから致し方なく…そんな感じだ。
サイはここで、吉野の言葉を思い出した。占いをしてもらった時、確かに吉野は「影、片割れが見える」と言っていた。
サイにとってそれはとても近しい存在であると。
あれは、影狼丸を指していたのではないだろうかと、ふと思った。
ならばやはり、何かの縁で結ばれているのだろう。





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