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「そろそろ、普通のおなごとして生きても、良いってことじゃないのかい?お前さん自身の幸せを求めてもいいんじゃないのかい?」

山茶花は目を見開く。そういう考えは浮かびもしなかった。忘れていたし、どうでも良いと思っていた事だ。
軍に入る為に剣を取り、剣に生きた。それ以外は全て捨てていた。
一度は捨てたそれを今、また拾い集めても良いのだろうか。

「…私は…」

「ま、お前さんは不器用の中の不器用だからね。ある意味剣より大変な道かもしれないけど」

「うるせぇな…!」

頬を染めながら睨むと、出雲は笑う。

「お前さんは型にはまり過ぎる。要は真面目過ぎるのさ。もっと肩の力を抜いて、素直に生きてみればいい。頼れる弟子も側にいるだろう」

山茶花はハッとし、気恥ずかしそうに目を逸らす。そんな様子がいちいち面白いのか、どこか嬉しそうに出雲は穏やかに笑っている。

「もっと甘えてごらん、辛い時は助けを求めてごらん。あの子はずっと、お前さんを受け止めようとしてくれてるじゃないか」

「……そう、だな…」

焔伽も、異性ながら山茶花にとって安心出来る存在になりつつある。いや、その上を行く掛け替えのないものになるだろうと、出雲は感じていた。
俺もそろそろお役御免かな?と笑う出雲に、山茶花は身を乗り出す。

「そっ、そんなことはない!出雲は私にとっていつでも…!」

「はいはい、ありがとうよ」

笑いながらあしらわれた事に、山茶花は不機嫌にため息を吐く。だがそれもすぐに穏やかな表情に変わった。
何かが吹っ切れたような、清々しい目をしている。

「出雲、ありがとう。私はいつまで経ってもあんたに守られてばかりだな」

「親が子を守るのは当たり前だよ」

ふふっ、と出雲は微笑み、煙管を咥え山茶花の頭を撫でる。久しぶりに感じるその手の感覚に、照れや恥ずかしさに顔をしかめながらも、心地良く身を任せていた。




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