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しばらく泣き続けた茶々が落ち着いた頃、山茶花は茶々を部屋まで送っていった。
風の宮までの帰り道を、焔伽と山茶花は言葉もないままに歩く。
会議の内容は聞こえてこなかったが、焔伽にもその内容は察することが出来ていた。
掛ける言葉が見つからないまま、風の宮の門を潜る。
山茶花の部屋の前まで来た時、髪を揺らしながら山茶花は振り返った。

「送り迎えすまなかったな。私はこの通りもう動ける、安心しろ」

浮かべる笑みが不器用で、我慢しているのがバレバレで。焔伽は眉を側める。

「…サザンカさん」

「ん?何だ?」

「…泣きたい時は、泣けよ」

山茶花は一瞬目を見開き、慌てて取り繕う。

「…なに言ってんだ。あれは自業自得だ、当たり前の結果であって…、っ」

そこまで言って、言葉が詰まる。
その瞬間、大粒の涙が零れ落ちた。床に落ちたその雫は、僅かに染みる。
その一粒を皮切りに、塞きを切ったように溢れ出した涙が次々頬を伝う。止めようと何度も目元を拭う山茶花を包むように、焔伽は抱きしめた。

「…アンタ、ほんと不器用だよな」

飽きれたような、どうしようもないなといった声色。腕が回されることはないが、山茶花は抵抗もせず身を預けている。震える小さな肩を優しく撫でた。

「抱えきれない分は、誰かに持ってもらえばいいんだよ」

本当に。
この師も、そして親友も、自分の容量を遥かに超えたものを無理に抱えようとする。そして平然な振りをする。
身近な二人の似た部分を思い、苦笑する。

「持てない分は俺が持つ。進めねぇなら背中押してやる。…ちょっとは頼れよな」

頭を抱き寄せると、顔を埋めたまま「黙れ馬鹿」と胸板を拳で叩かれる。涙声でも相変わらずの返答に益々苦笑いしながら、師の体の震えが治まるまで、抱きしめ続けた。




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