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「理由は、分かっているようだな」

動揺しない山茶花を見た千代菊は、既に腹を括って来たのだろうと察する。
山茶花は俯き、両拳を握りしめた。

「部下を死なせた……私が、殺した」

黄泉に憑かれ、そして同行していた部下を全員殺害した。例え操られていたのだとしても、山茶花自身がやった事。
そもそも黄泉に憑かれた事が落ち度であり、全ては山茶花の責任なのだ。

「殺された者の遺族の意向と、軍の掟により…お前を軍から追放する」

「……っ…」

俯いたまま歯を食いしばる山茶花を見て、絢鷹は立ち上がる。

「総隊長、解任はまだ分かる。…けど、何も追放までせんでも…」

「今、高天原は酷く乱れてる。山茶花程の手練れが抜けちまうのは、俺らにとってもきつい話じゃねぇのか?」

絢鷹に続き、燕志も言う。
軍から山茶花を失うことは、一番隊だけでなく軍全体に影響が出るだろうと、千代菊に訴えた。
だが千代菊の表情は何も変わらない。眉ひとつ動かさぬまま、山茶花をじっと見下ろしている。

「だが、掟は掟だ。軍内部の殺生は、理由を問わず追放処分だと決められているだろう」

腕を組み、苦い表情を浮かべながら言ったのは、三番隊隊長の右京という男だ。外跳ねの茶髪を耳の下で結び、きっちりとした格好をしている。右京は、軍の参謀でもあるのだ。大体の任務の計画は右京によって練られる。
真面目で堅物な性格…そんな右京が出した言葉は、絢鷹達とは異なる意見だった。

「掟は分かっとるよ、けど…!」

時と場合によるのではないか、今は掟に従っている場合ではないのではないか。絢鷹はそう反論する。

「掟はそもそも緊急時にどう対処するかを定めたものだろう。ならば今こそ掟に従うべきではないのか」

山茶花が手に掛けた部下の数は20人を超える。その責任を取るのに追放処分だけで済むのはまだ軽い方だと右京は言う。
その隣に座っていた遥も、一理あると小さく頷く。

「やったのは隊長ではなく黄泉です!全ての罪は黄泉にあるのではないのですか!」

「ウチもそう思う」

茶々の反論に絢鷹が同意する。
意見が真二つに別れる中、燕志は頬杖を着き小さく呟いた。

「だが、黄泉に罪は当てはまらないだろ」




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