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高天原防衛軍、本部。
城のような本部の会議室に、全隊の隊長、副隊長が集まっていた。
正方形の広い室内。一番奥の上座には、総隊長である千代菊が座っている。彼女が地下から出て来るのは、こういった会議や戦の時だけだ。隊長や副隊長でも滅多に会うことはない。
千代菊の前は通路になっており、通路を挟んで左右に置かれた机と椅子にそれぞれの隊長が座っていた。副隊長は、自分の隊長の右斜め後ろに控えている。
千代菊に近い方の椅子から、一番隊、二番隊と順に並んでいる。
他の隊の隊長は全員椅子に座っているが、一番隊の隊長…山茶花の姿だけが見えない。
空白の席の後ろには、茶々だけが控えていた。
山茶花がいないことを不思議に思う者はおらず、皆これから話す内容を察し重い表情だ。

やがて、閉ざされていた会議室が開かれる。

「焔伽、お前はここで待ってろ」

「…分かった」

部屋から山茶花に付き添って来たのだろう焔伽に山茶花は言い、会議室に入る。
扉は再び閉ざされ、室内には山茶花の足音だけが小さく響いた。
山茶花は席には座らず、千代菊の真正面に立つ。ちょうど通路の真ん中辺りだ。背後以外を囲まれるような形で、山茶花は静かに千代菊を見上げた。

「来たな。怪我の具合はどうだ、山茶花」

無表情のまま山茶花の身を案じる千代菊に、山茶花は薄く笑う。脇腹の傷を見せるように、羽織っている着物を広げた。

「この通り大丈夫だ。救援、感謝する」

傷口が分からないまでに回復しているのを見た千代菊は、小さく一度頷いた。

「呼ばれた理由は…分かっているな」

山茶花はしばらく押し黙り、やがて絞り出すように口を開いた。

「…分かってるよ」

「そうか。ならば単刀直入に言おう」

隊長達は各々に顔をしかめる。

「山茶花、お前を一番隊隊長から解任する」

重い宣告は、驚くほど軽く告げられた。

「…はい」

山茶花が頷くと、それまで黙っていた茶々が我慢しきれないとばかりに机に手を着いた。

「お待ち下さい!いくらなんでもそれは…!」

「茶々!黙ってろ」

千代菊に乗り出す茶々に声を上げ、山茶花は黙らせる。茶々はそれでも顔をしかめ、納得出来ないと首を振り山茶花を見つめる。




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