「そう、なら……アンタも殺すだけよ!」

言葉と共にリンカは武器を振る。三日月型の武器は持ち手が付いており、刀のように使うことも出来るようだ。

「、!」

影熊は振るわれる刃をかわし、時折足で受け止める。峰がない武器を丸腰のまま受け止めるのは容易ではなく、影熊は武器の側面を蹴るような形で止めていた。

「武器もなしに、案外器用なのね!」

先程一撃で事切れた神とは違うことに、リンカは些か感心したようだ。

「ねぇ、なんで妖のアンタが来たわけ?軍の隊長とやらはのんびり指揮するだけなの?」

踊るかのように回りながら刃を下ろすリンカを蹴り飛ばし、影熊は宙返りをして距離を取る。

「そんなこと僕が知るわけないじゃん。君達に構ってあげる暇なんて、ないんじゃないの?」

隊長達が何かの為に召集されていったのは事実だ。だが影熊は敢えて皮肉った言葉を返し、にやりと笑う。
案の定と言ったところか。
元々沸点の低いリンカは、あからさまに苛立ちを滲ませる。

「どこまであたしらをナメてんの…!」

リンカの怒りは、影熊に向けたものというより神に対するもののようだ。
影熊には何故リンカがここまで神を憎んでいるのかは分からないが、彼女が苛立てば苛立つ程好都合だった。

再び向かってきたリンカの刃は、先程よりも大雑把で大胆な太刀筋になっている。
それを読むことは、影熊も出来るようになっていた。綺羅と共に旅をした三年間は彼にとっての成長期間でもあった。
昔は影熊もどちらかと言えば感情的で力任せなところもあったが、今は違う。
相手の感情を利用して冷静に戦うことを綺羅から学んだ。
リンカはまるで、少し前の自分自身のようだと影熊は思った。

「くっ…!」

かわされ続けることに不機嫌に眉間にしわを寄せ、リンカは飛びのくと同時に武器を投げた。
回転しながら飛んで来る刃を、影熊は手を地面に着き飛んで避ける。影熊が立っていた場所を抉り、刃はそのまま飛んでいったが息着く間もなく武器は折り返してくる。
同じようにかわした影熊だが、刃が左足を掠った。
足元に血が飛び散り、痛みに顔をしかめる間にリンカは武器を受け止める。刃からは一滴の血が滴り落ちた。

「遠距離戦じゃ、アンタが不利ね」

裂けた服の間から覗く切り傷を見て、余裕気に笑みを浮かべるリンカ。だが傷を負った影熊も、彼女に負けない程自信に満ちた顔をしている。

「あのさ、僕の力が武術だけだとか思わないでよね」

不敵な笑みを浮かべ、影熊は足元の地面に勢い良く手を着いた。


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