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サイは聞いたことを年を追って整理した。

つまり朱雀…覇王は、愁麗と出会う数十年前に吉野に出会い、おそらくは思いも寄せていたのだろう。だが身分の違いにより会うことが叶わなくなっていき、島原から離れていった。
その後子供がいるとは知らぬままに愁麗に出会い、彼女を愛し、事件が起こり天照へ反逆したのだろう。

「…ウチは、自分に火の恩恵があることが不思議で仕方なかった」

忍術の中で、火遁の術を断トツで得意とする絢鷹だが、その理由は本人にも今まで分からなかった。だが生まれを聞いて、それは解決したようだ。

「父親が朱雀なら納得や。朱雀は火の鳥…火を司る神やからな」

血の繋がった親子なら、多少の素質は受け継がれる。火の恩恵は朱雀から継いだものだったのだ。

「そしてもうひとつ。サイちょんと共鳴した理由もわかった」

「ああ。俺達に血の繋がりはないが、絢鷹と覇王が親子なら…俺の右眼に反応してもおかしくない」

サイの右眼には、朱雀の力がそのまま封印されている。肉体のない朱雀自身と言っても過言ではない。

「サイちょんの眼を見て頭痛がしたのも、朱雀との共鳴の副作用やろうな」

右眼を隠していれば、共鳴は起きず頭痛もないようだ。
サイは千代菊に言われた、「右眼の力に影響を受ける者が近くにいる」という言葉を思い出す。あれは絢鷹のことだったのかと、喉につっかえた鉛が取れたような気持ちになった。

「……覇王に…息子がいたとは…」

覇王を殺したのは他でもないサイだ。絢鷹と吉野を前にして、少しの罪悪感が芽生える。それを察したのか、絢鷹はサイに向き直った。

「サイちょんは気にせんでええよ。むしろ、父親が迷惑かけて…ほんまにごめんな」

朱雀がサイを祟ったことも、その呪いに苦しんだことも、差別されていることも、絢鷹はアカネに聞いて知っていた。
直接関わってはいないが、やはり父親であると知った以上責任を感じるのだろう。

「絢のせいじゃない、そっちこそ気にしないでくれ」

サイが穏やかに言うと、絢鷹は困り笑いを浮かべながらも頷いた。
そして何か思い付いたように、吉野に顔を向ける。




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