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サイが真っ先に走り出し、他の三人もそれに続く。暫く走り続けると、逃げ惑う人々とすれ違うようになり、前方に赤い炎が確認できた。かなりの大きさだ。先ほどの爆発音といい、恐らく何かが村を襲撃したのだろう。村の入り口に立つと、多くの家が炎に焼かれ、音を立てながら崩れ落ちていた。

「・・・・!」

村の中に人以外の何かの気配を感じ、サイはじっと炎を見つめる。すると炎の中から、一匹の馬が飛び出してきた。サイと同じ、蒼い炎の鬣を持つ馬は息を荒げて足踏みをし、かなり興奮した様子だった。

「あれ、炎馬じゃねぇか!」

「焔伽、知ってんの?」

「ああ、炎を操る妖の中では比較的上位に位置する聖獣だ。大人しい筈・・・あんなに暴れるなんざ聞いた事ねぇよ。」

「来るぞ!」

サイの言葉と同時に突っ込んできた炎馬を、四人はそれぞれに散ってかわす。炎を吹きながら暴れまわる馬を見て、アカネは何かに気付いた。

「ねぇ!あの馬に何か付いてる!!」

木の上からサイに向かって叫び、それを聞いたサイはこちらを向いた炎馬を観察した。馬の胴体から首にかけて何かが巻きついている。

「あれは・・・ヤドリギか・・・!」

「なるほどねぇ、それで炎馬は暴れてる訳か。」

焔伽も納得したように刀を抜いた。そして馬を逃がさないように四人は取り囲み、ヤドリギを狙って攻撃を開始する。アカネは空中に飛び上がり、背中の帯から月の手裏剣を取って宙返りをして投げる。手裏剣はヤドリギを掠り、アカネの手に戻った。

「駄目か・・・それなら!」

札を取り出し、それを馬の体に貼り付けて念を込める。すると札から電気が流れ、馬は鳴き声を上げて苦しみ、僅かに動きが鈍くなった。

「ナイス、アカネ!」

焔伽はその隙を見て馬に近づき、二本の刀を投げ、それより早く馬の反対側にまわる。投げられた刀はヤドリギを馬から切り離し、速度を落とさないまま焔伽の方へ飛んでいく。焔伽はそれを受け止め、持ち直した。

「姫ちゃん、そっち行ったぜ!」

馬から切り離されたヤドリギは、新たな器を求めて側にいた姫宮に襲い掛かる。根を広げて、取り付こうと触手のような根を伸ばした。姫宮はそれを回避し、鎌で根を切り落とす。

「・・・これは・・・!」

切り落とした部分から、再び根が伸び始めた。どうやら再生能力が高い。それを察したサイは姫宮の前に立った。

「俺が焼き殺す。姫宮は炎馬を頼む!」

「はい!」

ヤドリギと電撃によって弱って倒れている炎馬に駆け寄るのを横目で見ると、包帯を外して右目を解放する。刀を握る手に力を込め炎を宿すと、襲い来るヤドリギを受け止め、弾き返すと同時に蒼い炎を巻きつかせた。

『ギャシャアアア』

赤より遥かに熱い蒼の中で悲鳴を上げて苦しむヤドリギを、サイは暫し眺め、グッと強く睨む。すると炎の勢いが増し、ヤドリギは跡形も残らずに燃え尽きた。完全に消滅した事を確認すると、サイは刀を納め、右目を包帯で覆い隠す。そして姫宮と炎馬の方に向かった。

「どうだ、様子は?」

サイの到着と同時に焔伽も馬の側に駆けつけ、アカネも屋根から飛び降りてきた。姫宮は炎馬の体に治癒術を当てて傷を癒していく。

「大丈夫、弱っていますが命に別状は・・・・」

「危ねぇ!」



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