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「・・・良かった・・・気がついたんですね。」
「君は・・・」
頭がぼーっとするのか、額を押さえながら姫宮を見る。その横に正座をして姫宮は微笑んだ。
「私は姫宮と申します。貴方はサイ、ですね。」
「ああ・・・。姫宮が治してくれたんだな。本当に・・・助かった。」
「分かるのですか?」
「ぼんやりと、聞こえてた。」
サイは横で眠っているアカネと焔伽を見た後、アカネの頬を伝っている涙を指で拭いた。
「お前がずっと俺に声を掛けてるの、ちゃんと聞こえてたぞ。」
気持ち良さそうに寝息を立てるのを見て微かに微笑む。
「お二人とも、治療が終わるまで貴方の側を離れようとしませんでしたから。」
「こいつらには、本気で迷惑かけた。・・・・情けない。」
はぁ〜・・・と深いため息をついてうなだれるサイに姫宮は首を振った。
「きっと、迷惑だなんて思っていませんよ。ですから、彼らが目を覚ました時にかけるのは、謝罪の言葉ではなく」
「感謝の言葉、だろ。」
「そういう事です。」
姫宮は頷いた。サイは腕の具合を確かめるように肩を回したり指を動かしたりしてみる。どこも全て、毒を受ける前の状態と変わりなかった。それどころか、右腕より軽い気がする。
「動かしにくいとか、ありますか?」
「いや、凄く調子がいい。ありがとう。」
「まだ万全ではないでしょう、お休みになりますか?」
「・・・・・・・・・。」
黙ったサイを見てクスクス笑い、行灯を持ってきて火をつけ、サイの側に置くと、部屋の明かりを消した。サイと姫宮の周りだけ、ほんのり明るくなる。
「私も眠れそうにありませんから、宜しければ、話し相手になりますよ。」
微笑む姫宮を見てサイも笑みを浮かべ、小声で一言「頼む。」と言った。
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