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「・・・焔伽(ほとぎ)、お前だろ。」

「・・・・流石、これでも気配を隠してたんだがな。」

木から男の声がして、二人の前に金髪の青年が下りてきた。両腰に2本の刀を差したその青年は、嬉しそうにサイに近づき、肩を抱いた。

「随分とご無沙汰じゃねぇか、サイ。親友の顔を忘れた訳じゃあなさそうだが。」

「俺にも色々あったんだ。」

「おまけに女の子まで連れて、隅に置けねぇな。・・・しっかし、家に近づいてきた妖狼を追ってきて友と再会するとは予想外だったぜ。」

焔伽はするりとサイから離れてアカネに手を差し出した。

「俺は焔伽。サイの幼馴染兼親友だ。それから、情報屋でもある。」

「そうだったんだ。あたしはアカネ、よろしく。これでも一応忍だよ。」

「忍かぁ〜、俺もガキの頃は夢だったぜ。」

握手を交わし、二人はすぐに打ち解ける事ができたようだ。早速忍についての話で盛り上がっている。

「・・・焔伽、先生は・・・」

焔伽は会話を中断してサイの方に振り向いた。顔をしかめ、少し俯く。

「あぁ、そろそろだ。・・・・・会っていくだろ?」

サイは頷き、そこからは焔伽を先頭にして三人は山を登った。少し歩くと、鬱葱としていた森が開けた。

「ここが故郷?」

想像していたものと違い、アカネはどこか間の抜けた声で言った。目の前には小さな井戸と、あまり頑丈そうとは言えない作りの、大きくも小さくもない家が一軒立っているだけだった。庭らしき所にはワラで作られたカカシが何本か立っている。

「そ。ここが俺たちの故郷だ。」

焔伽は笑って言い、家の扉を開けた。サイが先に入り、後ろにアカネが続く。居間にさしかかった所でサイは急に立ち止まり、ぼんやりと歩いていたアカネはその背にぶつかった。

「いたた・・・急に止まらない、で・・・・」

サイの視線の先にいる人を見、赤くなった鼻を押さえたまま固まった。右目以外の顔の全てを包帯で巻いた黒髪の女の人が、布団から上半身を起こしていた。着物から覗く手や首にも包帯は巻かれており、ほぼ全身が白い布で覆われていた。

「・・・・・お久しぶりです、先生。」

サイは女の人の隣に座り、軽く頭を下げた。そのまま突っ立っていたアカネの肩に手を乗せ、焔伽は「大丈夫。」と言った。

「貴方が来るのは分かっていましたよ、サイ。・・・随分、成長しましたね。」

聞いているものを落ち着かせるような優しい声で言い、翡翠の色をした右目を細めた。そして腕を伸ばし、サイの頬に触れる。

「もっと顔を見せてちょうだい。」

サイは顔を上げ、女の人の手を握って微笑んだ。

「中々顔を見せに来れず、すみませんでした。」

焔伽はその光景に笑みを浮かべ、二人の雰囲気を察して、アカネの手を引いて一度家を出た。



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