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「ね、ねぇ・・・!いつまで登るの?!」

もう何度目か忘れる程聞いた言葉。返事をするのも面倒なので、サイは無視して山を登っていった。

「ホントにこんな、人の手も入ってない山にサイの故郷があるの・・・?!」

落ち葉や苔の生えた岩に滑りながら、前を平然と歩いているサイを必死で追いかける。誰も入ってこないのか、木々は好き勝手に伸び、手で掻き分けなければ進めない。こんな所に本当に人が住んでいるのだろうか。「仙人の村じゃないでしょうね」と呟いて、一段と高い岩をよじ登った。

「ちょっ・・・休ませて・・・!」

もう歩けないとばかりにアカネは座り込んだ。それを見てサイは小さなため息をつき、側にあった手ごろな大きさの岩に座らせた。

「ありがと・・・でも何で急に故郷へ行くなんて言い出したのよ。」

一昨日泊まった村から近いから、と言ってサイは急に山へ入ったのだ。それ以外の理由を教えてくれなかった。いつもの彼らしくなく、どこか焦っている。

「覇王が何処にいるのかが知りたい。これから行く所には顔の広い情報屋がいるんだ。・・・・それに・・・そろそろだからな・・・」
「・・・・サイ?」

ほんの一瞬だけ、辛そうな顔をしたサイを見てアカネは首を傾げた。しかし、直ぐにいつもの表情に戻り、サイは刀を腰に差し直した。

「そろそろ行くぞ。」

「はいよっ!」

少し休んで元気が出たのか、アカネは岩から飛び降りた。そして、そのまま歩き出そうとするのをサイが止めた。

「ん?休憩延長?」

「違う。・・・妖の気配がする。」

サイに言われてアカネもさっと身構えた。よく探ってみると、確かに妖がこちらを狙っている。小さいが数が多い。

「アカネ、お前は木の上にでも避難してろ。一気に片付ける。」

「・・・! 了解!」

アカネは大人しく側の大木に登り、太い枝に座った。サイはそれを確認すると刀を抜いた。それとほぼ同時に飛び出してきた一つ目の妖狼が10匹程、サイを取り囲んだ。最初に後ろから飛び掛ろうとした妖狼に蒼い炎が巻きつく。サイは包帯を右手に巻き、一気に全ての妖狼を焼き払った。

「ひゅー!やっぱ便利だねぇ、その目。」

一瞬で元の静けさを取り戻した森に、アカネは飛び降りた。

「最初は怖いって思ったけど、慣れると全然だし。」

サイは包帯を巻き直し、刀を鞘に納めた。そして足元に落ちていた石を少し離れた木に向かって投げた。石は何かに弾けたのか、金属音を立てて跳ね返り地面に落ちた。そして、まるで切られたようにスッパリと割れた。



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