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「サイがさっき言ってた通り、私は忍の里『光風(こうふう)』の民だよ。」

「光風・・・中つ国で最も勢力の強い隠れ里だったな。」

アカネは頷き、話を進める。

「里には、先祖代々守られてきた秘宝があった。それは神の国、高天原(タカマガハラ)にあった物だと言われてたんだ。全部で五つあるらしくて、里にあったのはその内の一つ。あたしの両親は里の頭領だったから、先代の教え通りに宝珠を守っていた・・・そこに、あいつが・・・」

膝を抱えていた手に少し力を込めた。サイはそれをじっと見つめる。

「・・・・あいつ?」

「そう・・・あいつが・・・覇王が里を襲撃した。」

「覇王・・・?!」

その言葉にサイは反応した。少しばかり右目が疼く。

「ちょうど一年くらい前、覇王は里の皆を何人も殺して、宝珠を奪い去った。・・・・あたしの両親も、奴の火に焼かれた・・・・里は辛うじて崩壊せずに済んだけど、あたしは皆の仇をとりたい。だからあたしは、それまで触った事もなかった忍具を手にした。」

アカネも己と似た境遇だったのか、とサイは思った。襲撃された時期も被っている。村を襲った時覇王は、何かを手にして去って行った。それはアカネの言う宝珠の一つだったのだろうか・・・・

「お前が初めて武器に触れたのは、たった一年前なのか?」

「・・・・そうだよ。」

「それじゃ、ろくに戦った経験も無いだろ。・・・・それでよく覇王を倒すなんて言えるな。」

「分かってる!だけどそれでもあたしは・・・・!!」

アカネは少し身を乗り出した。サイにはその目に涙が浮かんでいるように見えた。それは目の前で揺らいでいる焚き火のせいかもしれないが。

「俺も、村を覇王に襲われた。・・・・俺以外に、生き残りはいない。」

「・・・・・もしかして・・・サイを呪ったのは・・・・」

「あぁ、覇王だ。・・・俺は奴を倒すために旅をしていた・・・・お前と同じだ。」

「・・・そう、だったんだ・・・」

アカネは身を引き、一瞬だけ焚き火に視線を戻し、サイを見つめた。

「・・・お願い、あたしも連れて行って。」

「・・・・・・・・。」

サイは真剣な表情でアカネを見つめた。睨んだ、と言った方が正しいかもしれない。アカネは目を逸らさずにじっと返事を待っている。やがてサイは短くため息を零した。

「祟り眼に自分から関わってくる奴がいるなんてな。」

サイは布団代わりの布をアカネに渡した。アカネはそれを抱いて唖然としている。

「さっき、きつい事言って悪かった・・・早く寝ろ。明日は早いぞ、『アカネ』」

笑って言ったその一言でアカネの表情はパッと明るくなり、布を広げた。

「ありがとう・・・・サイ。」

既に背を向けて横になっているサイに向かって呟き、自分も布にくるまった。









翌朝

「・・・・おい、起きろ。・・・・・アカネ!」

「ん〜・・・もうちょっと寝かせて・・・・・」

「・・・・・・・。」

サイは背を向け、何も言わずに歩き始めた。それを見てアカネは慌てて身を起こす。

「あー!ごめん冗談だってばー!」

つまずきながら急いで追いかけてくる姿に思わず笑い、軽く頭を小突いた。「あたっ!」と短い悲鳴を上げ額を押さえる。


ここから先は、賑やかな旅になりそうだ。




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